6月20日、サンフレッチェ広島とモンテディオ山形の一戦を取材するため、広島のエディオンスタジアムに向かった。この試合を前に、J1通算得点を149、J2と合わせたリーグ通算得点を199としていた広島のFW佐藤寿人が、「1点」決め区切りの大台に乗せるかどうかに注目していた。だが佐藤は、前半26分に先制点を奪うと、その後、9分間で2点追加。前半のうちに「ハットトリック」を決め、観衆の度肝を抜いた。

これで佐藤のJ1通算得点は、中山雅史の最多157点に次ぐ歴代2位の152点となり、リーグ通算200ゴール到達は史上初めての快挙だ。どうしてこんなに点が取れるのか。この日たどり着いたのは、佐藤が日ごろピッチの内外で行っている地道な作業の「積み重ね」が背景にあるということだった。

試合中、佐藤は(1)パスの出所が見える位置(2)山形のDFの視野から外れ、かつ、DFの動きが見えるような位置(DFとDFの間)―にいようと移動を続けていた。ボールが動くたびに動き直しが必要なので、根気はいるが、無駄のない身のこなしでうまく陣取っていた。山形のDFは、佐藤の動きを把握しづらく、やりにくかったはずだ。

この位置取りが1点目に生きた。広島のMF青山敏弘がボールを持った瞬間、MF柴崎晃誠は前に走りだした。相手のDFがその動きにつられ、柴崎の方にわずかにポジションをずらしたことで、パスコースが生まれた。佐藤はそれを見逃さず、走り込んで青山のパスを受け、倒れ込みながら左足で決めた。いい位置にいたからこそ、山形のDFの動きを見て、青山のパスのタイミングに合わせて動き出せたと言えるだろう。青山のパス、柴崎の動き出しと連係も見事だった。

試合後の話で、ピッチ外での工夫も見えた。佐藤はゴールを奪うために「考えに考える」という。具体的には、去年のリーグ戦で生まれたサイド攻撃からの得点シーンの映像をチームスタッフに編集してもらい、クロスを上げた位置とシュートを打った位置に印をつけ、点をとるための位置取りを分析。そして日々のトレーニングで、チームメイトにどういうパスを出してほしいかを伝え、「ゴールを作り上げるために、味方と(考えを)共有する作業」を繰り返す。この日の3点目は柴崎のクロスをヘディングで決めた。混戦の中で挙げた2点目も「遊びの中でよくやっている」形が試合で出たそうだ。

33歳の佐藤は2000年に市原(現J2千葉)に入団してから03年までの4年間はリーグ戦で計13点と、デビュー当初から得点を量産していたわけでない。ただ、03年に仙台で佐藤と一緒にプレーしていた広島の森保監督は「(当時から)本当にどん欲な男だなと見ていた」と語り、「今も変わらない。日々の努力、探求心、ゴールを奪おうとするこれまでの努力に敬意を表したい」と賛辞を贈る。苦労した時期からの努力と工夫の蓄積がいま実を結んでいると言えるだろう。佐藤は04年から、11シーズン連続(J2含む)2桁ゴールも記録している。

「今まで取ってきたもの(点)は過去のもの。この記録は通過点」と言い切る佐藤が、これからどれだけ上積みしていくのか、目を離せない。

大島 優迪(おおしま・まさみち)1990年生まれ、神奈川県出身。2014年共同通信入社。大阪社会部で行政を取材。15年6月に大阪運動部へ。サンフレッチェ広島や水泳などを担当。