選手からしたら、その内容にかなりの手応えを感じているはずだ。J1第2ステージ開幕からの3連戦。第1ステージ上位の横浜M(6位)、浦和(1位)、FC東京(2位)と対した山形(16位)は、厳しい相手にもすべて引き分けと一度も負けなかった。

ただ、勝ち切れなかったことも事実で、手にした勝ち点は3ポイント。灼熱(しゃくねつ)の中、270分を走り切ったにもかかわらず、勝ち点では1勝分の価値しかないとなると、ちょっと効率が悪いと感じる人もいるのではないか。

気が早いと思われるかもしれないが、シーズンも半ばを過ぎると、J1の残留争いが気にかかってくる。今季の通算20試合を消化した時点で勝ち点20に届いていないのは、15位・松本、16位・山形、17位・新潟、18位・清水の4チーム。19日の第3節ではこの4チームがそろって勝ち点を積み上げた。そろそろ尻に火がついてくる時期だ。

J2降格の危機にさらされているチームからすれば、ここからは内容よりも結果がすべて。1つでも多く勝ち点を稼ぐことが何より優先される。こういうチームは目的が明確なだけに、対戦する上位陣は足をすくわれかねない。優勝争いの鍵を握っているのは、実は下位のチームともいえるのだ。

今季開幕前、最も苦戦が予想されたのが山形だった。昨年末のJ1昇格プレーオフ(PO)で、数々のミラクルを巻き起こし、4シーズンぶりにトップ・ディビジョンに復帰を果たした。しかし、昨季のJ2での最終順位はPO進出圏ぎりぎりの6位。リーグ戦の成績は、最も客観的にチーム力を反映する。しかも、開幕前に大きな補強がなかったことを踏まえると、「J1では苦しいかな」というのが正直なところだった。

他のチームから比べれば、決して厚いとはいえない選手層。財政的にも厳しいクラブが上位チームと伍するには、相手を上回るハードワークをこなすことが必須条件だ。第2ステージの山形は、まさにその走力でチームに足りない部分をカバーしている。

この季節になると、フィジカルを鍛えているチームとそうでないチームの違いが一目で分かる。練習時間の豊富さが、そのまま日焼けした肌の色に現れるからだ。山形の石崎信弘監督を見れば驚かされるのだが、人間ここまで日焼けするのかというくらい、黒い。監督が黒ければ、選手も当然、黒い。第3節ではFC東京の選手が、“美白"に見えたほどだ。鍛え上げられた日焼け軍団・山形の走力は、走り切ることがより難しくなる真夏を迎えることで、確実に相手に対するアドバンテージとなっている。

第2節の浦和戦に続いての完封。FC東京戦で無失点に抑えたセンターバック(CB)西河翔吾は試合を優勢に進めた要因について「後半に相手の足が止まったので」と振り返った。だが、考えてみると本来、足が止まるようなプレーをやっているのは山形の方。前線からの積極的なプレスでボールを追いかけ回し、奪ったらショートカウンターを仕掛ける。それを猛暑のなかで90分を通してやり切れるというのは、並の体力では不可能だ。それでも山形の選手たちは走り切ってしまう。それを可能にしている山形の練習というのは、きっと恐ろしいものなのだろう。

現実的なことを言えば、勝ち点を拾っていかなければJ2に逆戻りする可能性は少なくはない。そんな山形の強みは、「守備の我慢」ができようになってきたことだ。キャプテンのGK山岸範宏が「自分たちの生命線」という、しっかりした守備を基盤とした試合の進め方。不用意な失点をしなければ、勝ち点につなげる可能性は高まる。さらに心強いのは、DFラインの後方にその山岸が控えていることだ。

FC東京戦でも、後半開始直後の前田遼一のヘディングシュートに対しビッグセーブを見せた。チーム内で抜群の存在感を示す守護神の存在は、押し込まれる展開の多いチームには不可欠だ。優れたGKの存在はそれだけで勝ち点を生み出すというが、山岸はまさにそれを地でいっている。

判官びいきではないが、財政規模の小さい地方クラブが経済的に恵まれたクラブに一泡吹かせるのは見ていて楽しい。そして、地方クラブはその地域の人々のアイデンティティー的な存在になっていることが多い。素晴らしいことだ。その意味で山形をはじめとした地方の小クラブには、ぜひ頑張ってほしい。

そういえば☆(曹の曲が由)貴裁監督の湘南といい、反町康治監督の松本といい、財政規模の小さいクラブは監督の色が出た魅力的なサッカーを見せる。そして、そういうチームの選手に限って、よく日焼けをしている。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。