人の話はちょっと疑問を持つくらいで聞いていたほうが、真実を見誤らないで済むのかもしれない。特に通訳を介する外国人監督の場合、細かなニュアンスが伝わらないので、日本語に訳された字面ばかり追っていると、まったく試合内容と異なる場合がある。

第2ステージが始まったJ1の第1節。川崎対FC東京の試合後に行われた記者会見がそうだった。FC東京のマッシモ・フィッカデンティ監督は、2―0で敗れたこの試合を振り返って「前田(遼一)のシュートやCK、セットプレーからチャンスを作っていた。あとはフィニッシュの精度」と話した。確かに前半13分には、前田が川崎のDF武岡優斗の信じられないパスミスをカット。ドリブルで持ち込んでシュートを放ったビッグチャンスはあった。ただ、FC東京の攻撃で印象に残ったのはこれくらい。監督が語る試合の印象と、実際に観戦して感じることには大きな隔たりがあるものだなと思った。

第1ステージで2位と躍進したFC東京。総得点24点のうち半数近くの10ゴールを挙げた武藤嘉紀がドイツ1部リーグのマインツに移籍したことで、このチームはどのようにして点を取るのだろうか。多くの人の注目していたのではないだろうか。

なぜなら、第1ステージにおけるこのチームの得点パターンは、あまりにも偏っていたからだ。武藤以外は、ほとんどが太田宏介のセットプレー絡み。スペシャルな武器を持っているといえば聞こえは良いが、上位チームにしては得点を予感させる形があまりにも貧弱だというのが正直なところだった。

攻めるために守る。独力でゴールを奪うスピードと突破力を持つ武藤の存在。それがあったから、第1ステージのFC東京は、守備ラインを深く保つ戦い方をした。引くことで相手を前方に引き寄せ、その背後のスペースを突く。正しいカウンターの仕掛け方だ。ただ、この戦い方で結果を残すには手数をかけずに相手ゴールを急襲できる特異な能力を持つアタッカーが必要だ。そして、そのスペシャルな能力を持っていたのが武藤で、持っていなかったのが他のアタッカーとなる。試合に出る3人のうち、武藤以外の2人がゴールという結果をほとんど残せなかったのは、そういうことなのではないだろうか。

武藤という切り札を失った状態で迎えた第2ステージ。FC東京はどのように戦い方を変えるのか。フィッカデンティ監督の考えはこうだ。攻撃時にボールを運ぶ距離を短くする―。「4―3―1―2」で攻撃を担う「1―2」に当たる3人が、前方でより激しくプレスを仕掛けてボールを奪い、そのままゴールに迫るというやり方だ。

ただ、このフォアチェックによる前進守備は、アタッカー3人に大きな体力的負担を強いる。しかも、これからは酷暑の続く季節。フィッカデンティ監督は「1失点するまではいい内容。高い位置からアタックすることができた」と評価したが、消耗からの疲弊は確実に訪れるはずだ。

川崎戦では前田、石川直宏の2トップが相手センターバック(CB)にプレッシャーをかけたが、球回しにたける川崎は武岡、小宮山尊信の両サイドバック(SB)を使ってこれをうまくいなしていた。FC東京のようにボランチを3枚並べる布陣では、どうしてもトップ下の左右のスペースが空く。そのスペースを相手SBに利用されれば、前線からのプレスも半減する。プレッシャーをかけるのであれば、両SBには2トップが行き、CBにはトップ下の東慶悟がというのが、より効果的だろう。

試合後、FC東京のサポーターから発せられたブーイング。それは何を意味するのだろうか。確かにシュート数はわずかに6本。しかも流れの中からはゴール枠を外れた2本と、内容的につまらないものであることは疑いなかったが。

敗戦を受けた選手たちのコメントからも、考えに統一感を欠くことがうかがえた。前からプレッシャーに行こうとした攻撃陣に対し、守備の中心となる森重真人は「引いて我慢するのも必要だった」と正反対の意見。第1ステージ終了からわずか2週間での修正は簡単なことではないことなのだろう。

16日の新潟戦で3点を挙げたとは言え、攻撃の手法が極端に少ないFC東京。そのアタッカー陣のカギを握るのは、新加入のネイサン・バーンズだ。昨年のオーストラリアAリーグでMVPを獲得したオーストラリア代表のFWは、顔だけを見るとネイサンというよりはオジサンなのだが、DFの背後に入り込むスピードなどプレースタイルは武藤に似ている。いきなり武藤と同じような決定力を示すことはないだろうが、チームにフィットすれば面白い存在になり得る。何よりも武藤とタイプが似ているのであれば、戦術を極端に変えなくてもいい。そのなかで単調な攻撃の引き出しを増やしていく。エースが去ったFC東京に、早急に求められる課題だ。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。