プロ3年目のシーズンを迎えた阪神の藤浪晋太郎投手が着実に進化を遂げている。開幕から先発ローテーションを守り、昨季までの2年間で2回しかなかった完投数が今季は交流戦終了時点ですでに4。球速は158キロをマークして自己最速を更新した。5月20日には本拠地甲子園で宿敵巨人を相手にプロ初完封を達成し、試合後に「いつかはできると思っていた。それがたまたまきょうだっただけ」とさらりと言ってのけた。

ことしから阪神担当となって彼を取材する中で最も感じるのは、頭の良さだ。毎日のように大勢の記者に囲まれ、次々と投げかけられる質問に対して一つ一つ頭の中でしっかり整理して答えているのが見て取れる。甲子園で春夏連覇を達成した大阪桐蔭高時代から世間の注目を浴び続けていることもあろうが、とても21歳とは思えない落ち着きだ。

ドラフト会議で4球団が1位指名で競合し、鳴り物入りで入団した期待に応え、セ・リーグでは1967、68年の江夏豊投手以来となる高卒1年目から2年連続2桁勝利を達成したが、まだ荒削りな印象はぬぐえなかった。制球力、対左打者への投球、試合終盤での失点の多さ、フィールディング…。結果は残しながらも課題は多く残されていた。

2月の沖縄・宜野座キャンプ。藤浪はけん制や守備練習など、投球以外の練習に多くの時間を費やした。ブルペンでの投球は2、3日に1回程度で、コーチに転がしてもらったボールを捕球し、ネットに向かって黙々と投げ続ける姿が連日見られた。若さゆえによりよいボールを投げることに躍起になってもおかしくはないが、自らを客観的に分析し、足りないものを埋めていく作業を続けた。その姿に先輩の能見篤史投手が「考えてやっている。しっかり自分の心を持ってやっている」と感心したほどだ。

2メートル近い長身から豪快なフォームで威力満点の球を投げ込む投球スタイルからは想像しにくいかもしれないが、実は理論派。課題の制球力をつけるため、オフには広島のエース、前田健太投手からなるべく力を抜いて投げる「脱力投法」を学んだ。シーズン開幕後も、横振りになってボールがシュート回転する原因になっていた腕の振りを上からたたきつけるようなイメージで修正し、投球の安定につなげた。

藤浪がプロの世界で活躍できる要因を考えたとき、ある選手が2軍でもなかなか結果を出せなかった時期を振り返って話した言葉が頭に浮かんだ。「いろいろ指導を受けて、考えすぎました」。監督、コーチはなんとか選手を一人前に育てようと様々なアドバイスを送るが、人によって意見が異なることも当然ある。結局、何が正しいのか分からなくなり、迷いが生じてしまう選手も少なくはない。ただ、藤浪は違う。「コーチでそれぞれ言うことが違うこともある。自分で取捨選択しながらやっていく」と言う。自分にとって何が正しくて、何が間違っているのかを考えて判断し、行動に移すことができるのは間違いなく強みだ。一流と呼ばれる選手になるためには技術を身につけることは大前提だが、それと同様に成長していくための頭脳も必要なのだろう。

和田豊監督は藤浪に「球界を代表するエースになってほしい」と高い期待をかける。きっと、藤浪は日本一の投手になるまでの道のりを頭の中で描いていくだろう。米国に活躍の場を移したダルビッシュ有投手(レンジャーズ)や田中将大投手(ヤンキース)は高卒3年目で大きな飛躍を遂げた。2015年シーズンを終えたとき、藤浪がどんな成績を残しているのか楽しみにしながら、少しでも彼の思考に触れられるよう取材を続けたい。

秋友翔大(あきとも・しょうだい)1988年生まれ。大阪府出身。2012年共同通信入社。札幌支社編集部で警察などを取材。13年12月に大阪運動部へ。プロ野球を担当し、15年からは阪神を担当。