Jリーグの関係者はこの出来事を真摯に受け止めなければいけないだろう。それは、20日に行われたJ1第1ステージ優勝セレモニーだった。村井満チェアマンが覇者・浦和のキャプテン阿部勇樹に、年末に実施するチャンピオンシップへの招待状を手渡したときにスタンドから容赦のないブーイングがわき起こったのだ。新レギュレーションへの反発は、祝賀ムードのなかで起こったからこそ、持つ意味が重かったのではないだろうか。

今シーズン、11年ぶりに復活した2ステージ制。確かにJリーグ発足当初であれば、サッカーに興味を持っていない人を新たに取り込むという意味でクライマックスを分散させる必要はあったのだろう。

ただ、時代は変わった。Jリーグが始まった1993年には一度もW杯に出場したことのなかった日本はその後、世界最高の舞台であるワールドカップ(W杯)を5回連続で経験した。現在では、W杯は出場して当たり前の大会となり、テレビでは海外の一流サッカーが当たり前のように放送されている。そのような環境でサッカーに接してきたファンの中には、ある意味でサッカー関係者以上に豊富な知識を持っている人も少なくない。だからこそ、数あるタイトルのなかでも最も重要なリーグ優勝の価値をおとしめられることに拒絶反応を示すのだ。

それにしても、第1ステージに続き、第2ステージも同一チームが制したとしても、年間王者になれないという現行のシステムはいかがなものだろうか。両ステージともに制覇したチームがチャンピオンシップで敗れるようなことになったら、Jリーグという組織そのものに大きな批判が集まることは目に見えている。そうなれば、議論はサッカー界の枠だけに収まり切れないだろう。そして、昨シーズンの浦和を見ればこの可能性がまったくないとは言い切れない。残り3試合での信じられない失速。もし、そのようなことが今年も起これば、暴動でも起こりかねないと思うのは考え過ぎだろうか。

思い起こせば、99年のJ1。チャンピオンシップで清水をPK戦で下した磐田が年間王者に輝いた試合はかなり違和感があった。敗れた清水の年間総勝ち点は全チームトップの65ポイントだった。対する磐田は6位タイとなる49ポイント。第1ステージこそ制したものの第2ステージでは16チーム中12位とまるで振るわなかった磐田がチャンピオンになったのもそうなのだが、それ以上に清水の選手が報われなかったのが気の毒だという声が数多く巻き起こった。

清水は第1ステージ3位、第2ステージ1位と、シーズンを通して安定感ある戦いぶりを展開。年間勝ち点で2位の柏レイソルに7ポイントも差をつけていたのだ。今季から導入されたチャンピオンシップのレギュレーションは、それと比較にならないほどの“時限爆弾"的な危険性をはらんでいる。

村井チェアマンは「今後Jリーグがより魅力あるものに進化し続けていくためにも、毎年しっかりとJリーグそのものの総括を重ねていく」と語っている。状況によって大会方式も修正するという意味だろう。そのなかで一番重要なのは、リーグ優勝というタイトルの価値を高めていくことだ。奇をてらった方式ではない、正統なやり方で決まったJリーグ・チャンピオンという称号の前には、多少のスポンサー料の増額や意図的に仕込まれたヤマ場は、なんの意味も持たない。なぜなら、サポーターは上から押し付けられたクライマックス・シーンがなくても、十分にサッカーを楽しむ素養をすでに備えているからだ。

それにしても、第1ステージの浦和は昨シーズン終盤の姿がうそのように勝負強かった。16試合を戦い11勝5分け。無敗で優勝を決めたのはJリーグ史上初だという。ただ、そのすべての試合に圧倒的な強さを発揮した訳ではない。優勝を決めたヴィッセル神戸戦もそうだったが、内容では劣勢の試合も数多くあった。それでも負けない。その粘り強さは、圧巻だった。

第5節の川崎フロンターレ戦では、1点をリードされた試合を終了間際の後半44分に追いつき、引き分けに持ち込んだ。第9節のガンバ大阪戦では、後半39分の得点で破り勝ち点3を得た。負けを引き分けに、引き分けを勝ちに持ち込むしぶとさは、去年までの浦和には明らかに見られないものだった。その意味で、心技ともに充実の時期を迎えたチームの第1ステージ制覇は、当然の結果といえたのではないか。

「負けていない」ことによるプレッシャー。それは第2ステージの足かせになるのかもしれない。ただ、浦和の実力は現在のJ1では頭一つ抜けている。このまま第2ステージも制して、チャンピオンシップとリーグ戦のあり方をもう一度議論させる機会を作り出してほしい。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。