勝ち点を積み上げる作業の繰り返し。リーグ戦の優勝は、そうして争われるわけだが、獲得したポイントの価値はすべて同じだ。ただ、それを手にした状況はさまざまに異なる。楽勝で得たものもあれば、恐ろしく苦労して「拾った」ものもある。そして、最終的にタイトルにたどり着くのは、難しい状況でより勝ち点を拾ったチームであることが多い。

今シーズン、開幕からのチーム不敗記録を更新し続けているJ1浦和。昨シーズン、終盤に自滅する形で優勝を逃したチームは、確実に変わってきている。優勝したG大阪に勝ち点1差で逆転されたことが、よほど堪えたのだろう。現在のチームは、勝ち点を取りこぼさない、難しい試合でも勝ち点を得ていくという、我慢のサッカーができるチームに進化している。

大きく変化したのは、ディフェンス陣の意識だ。昨年までは「行け 行け」の乗りで無謀な攻撃参加を繰り返し、軽さが感じられた。それが今年は、同じメンバーが攻撃よりも本来の守備に重きを置くことで無駄な失点を喫することが減った。昨季は森脇良太、那須大亮、槙野智章の3バックで10ゴールを挙げたが、今シーズンはここまでで2得点。確かに得点数は減ったが、それでも本来の守備に専念する方が、チームにとっては有益なことは明らかだ。

23日に鹿島と対戦した第1ステージ第13節。ACLの関係で消化試合が1少ない浦和が2―1の逆転勝ちを収め、無敗記録を12に伸ばした試合を見ると、進化した今季のチームはこのような試合の流れでも勝ち切れるのだという内容だった。

浦和は興梠慎三の1トップの後方に武藤雄樹と李忠成の2シャドーを配する3―4―3。対する鹿島は4―2―3―1。このフォーメーションによるマッチアップの妙で、浦和は4―1で完勝した前節のFC東京戦のような躍動感を封じられた。武藤、李の2シャドーにスッポンのように食いついてくる柴崎岳、小笠原満男の2ボランチ。ときに最終ラインに吸収されても離れないことで、浦和は前線でのパスの出しどころを失ったのだ。

一方、鹿島は効果的なカウンターを繰り返し、チャンスを作り出す。前半のシュート数が浦和の3本に対し、鹿島が11本という数字は試合内容の優劣をそのまま表していた。

後半22分、不運な形から浦和は失点を喫した。柴崎のロングフィードを、前節が日本デビューとなった鹿島の長身CFジネイと競り合った森脇がヘッド。後方に流れたボールは、前に出てきたGK西川周作の頭上を越えてゴールに転がり込んだ。

浦和が大きく成長点はここからの判断だ。自らも攻撃好きな槙野が、森脇に「性格的に自らのミスを取り返そうと前掛かりになる。それを抑えた」というように攻撃を自重させたことだ。守備を手薄にすれば、カウンターからの失点のリスクは高まる。それは鹿島の狙いでもある。攻撃はアタッカー陣に託す。そんな信頼関係が、見事な逆転劇を生んだ。

同点ゴールは失点からすぐの4分後。心理的焦りの出る前に決まったのは理想的だった。後半26分、興梠のスルーパスに右サイドを抜け出した途中出場のズラタンがダイレクトでセンタリング。このボールにDF西大伍を振り切って鹿島ゴール前に侵入した武藤がヘッド。「あまりにもフリーだったので、逆に緊張した」というシュートで同点とした。

さらに勢いづく浦和は、後半38分に相手陣内での集中守備からボールホルダーのジネイをチェック。こぼれたところを森脇が前線の関根貴大にスルーパス。ボールを受けた関根はカットインして、右足で強烈な決勝点をたたき込んだ。20歳のサイドアタッカーの3戦連発弾。本人も「驚きしかない」というゴールは、いまの浦和の勢いを示す象徴的なシーンだった。

今シーズンの浦和はACLを見据えて、大量11人を補強。しかし、そのACLも早々と敗退が決まった。メンバーがだぶつくなかで、J1仙台から新加入の武藤はレギュラーの座を獲得。存在感を示している。浦和の昨シーズンからの一番の変化は、もちろん選手たちの意識であることは間違いない。だが、武藤と2年目の関根がチームにフィットしてきたことも大いに関係しているだろう。

「今日は内容として引き分けが妥当。われわれが勝利できたのは、神様のおかげかもしれない」

難しい試合で、勝ち点3を獲得。普段はなにかと八つ当たり気味のコメントが多いペトロビッチ監督も、この日はじつに寛容。それだけいまの浦和は充実しているということだろう。第1ステージは残り5試合。いままでタイトルに縁のなかった指揮官が、初めてカップを手にするのだろうか。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。