J1は9試合を消化した時点で、第1ステージはすでに折り返しを迎えた。首位と2位の直接対決となった浦和対G大阪の試合は、浦和が勝利を収め無敗をキープ。気の早い赤いサポーターの間では、昨年煮え湯を飲まされた因縁のG大阪を下したことで、「優勝」の二文字さえ飛び出している。

Jリーグ側によると、2ステージ制になるとシーズンを通して盛り上がるポイントが増えるとの説明だったが、果たしてそうなのだろうか。ここ数年、終盤に必ずといっていいほど失速していた浦和は今シーズン、見違えるほど手堅くなった。そのチームがあと7試合を慎重に戦い抜けば、タイトルが見えてきそうな感じだ。

ただ、すんなりと浦和が優勝してしまったら、なんと盛り上がりの少ない短期決戦のリーグ戦だったと振り返ることになるだろう。対抗馬であるガンバ側からすれば、アウエイでの一回の失敗で終わってしまったステージ。大会方式を変更したJリーグ側からしても、当初の目論見は大外れだ。

本来は、その国の最も権威のあるタイトルがリーグ優勝だ。それを切り売りしたら、間違いなく価値は下がる。優勝者は、タイトルのご褒美に甘いケーキを“ホールごと"欲しいのであって、細かく切ったショートケーキでは喜びが半減してしまうのだ。

話がちょっと先走ってしまったが、試合そのものを個別に見ればJリーグには楽しい要素が多い。J1第9節、FC東京と川崎が激突したいわゆる「多摩川クラシコ」も見どころの多い試合だった。

結論からいうと、この1戦は1試合で2試合分楽しめる内容だった。そのなかで二面性を見せたのは、予想通り川崎だった。前半は

FC東京を圧倒したものの、後半になるや急激に失速してしまった。その変わり様は同じチームとは思えないものだった。

中村憲剛、大島僚太の司令塔を中心に、自在にポジションを変えてショートパスを通していく好調時の川崎は、J1でも間違いなくトップの攻撃力を見せる。この試合でも「前半はほぼパーフェクト」と中村が語っていたようにボールを支配する。当然、先制したのは川崎。前半21分に中村のFKを大久保嘉人がヘディングでゴールに突き刺した。大久保にとってJ1通算140点目で、憧れの三浦知良を超える記念すべき1点となった。課題とされる守備面もほぼ完璧。FC東京のシュートを1本に抑え、「強さ」を感じさせる前半だった。

ただ川崎が抱える問題点は、相手を圧倒した前半に1点しか挙げられなかったこと。「前半で追加点を決めていれば」という中村の言葉は、1―1で引き分けた第5節の浦和戦でも聞かれたものだった。多くのチャンスがありながらも2点目を挙げられない。そういうチームは、得てして大きな代償を払うことになる。

一方、1失点を喫したとはいえ前半のFC東京はよく耐えた。このチームは、手堅さでいえばイタリア代表に共通するものがある。ただ欠けるのは、ピルロのようなファンタジスタがいないということなのだが。

それでも、FC東京には現在Jリーグで最も勢いのある武藤嘉紀というタレントがいる。その武藤の勝負する姿勢が、劣勢だった試合の後半を一変させた。

後半19分、カウンターからドリブルで仕掛けた武藤は、左サイドに逃げるスペースがあったにもかかわらずDF2人の間を強引に割って入りファウルを誘った。このプレーで2枚目の警告となった車屋紳太郎が退場処分。これが勝負の分かれ目となった。

後半26分、武藤が倒されて得たゴール正面のFK。太田宏介がこれを直接決めて、1―1の同点とする。さらに後半42分、またも武藤が前線からの激しいチェイスでボールを奪い返した直後にエウシーニョのファウルを受けFKを獲得。左サイドから放たれた太田のFKからのクロスに、武藤自らが飛び込み、鮮やかに逆転のヘッドをたたき込んだ。

試合後の「宏介くん(太田)のおかげです」の言動は、容姿とともにどこまでも爽やか。ただその武藤のプレーは、あくまでも泥臭い。それが結果として顕著に表れたのが、この川崎戦だった。そして体をぶつけること、倒れることをいとわない武藤の武闘派を思わせる気迫あるプレーは、現在のJリーグに欠けている要素の一つなのではないだろうか。

対照的にコンタクトをなるべく避ける川崎のサッカーは、強さを感じさせる一方でもろさも同居している。安定性を増さなければ、タイトルを争うのは難しくなる。

それにしても5位川崎との上位対決で、FC東京はよく踏みとどまった。第9節を終えた時点で首位浦和と勝ち点3差の2位に浮上。第12節の埼玉スタジアムである直接対決が、がぜん楽しみになった。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。