昨年12月からプロ野球のオリックスを担当している。これまでサッカーのJ1、J2や陸上を担当してきた私にとってプロ野球は未知の世界だ。中学生の時に巨人の試合をテレビで時々見るくらいで、真剣に見るようになったのは入社してスコアをつける勉強をするようになってからだった。これまでは複数の競技を同時に担当してきたが、プロ野球は遠征にも同行するなど、1年間つきっきりで

取材できる。やってみて感じるのは、大学までサッカーをしていた身としては、野球の世界は独特で雰囲気が全く違うということだ。

これまで高校、大学、社会人と各世代の野球を取材したが、どの年代の組織にも揺るぎない縦社会が存在していた。先輩と後輩の関係や役割ははっきりしている。プロ野球の場合は入団した年ではなく、年功序列の世界だ。より若い選手が雑用をし、先輩にも気を使う。、反対に食事に行けば先輩が後輩の分を払うのが当然だ。一方のサッカーは、取材して驚いたのが、年上の選手に対しても若い選手が名前に「君」を付けて呼ぶことだった。もちろんベテランや年齢がかなり離れている人には「さん」を付けているが、野球に比べて上下関係はさほど厳しくなく映る。なぜなのか。それは競技の特性の違いだと考えている。

野球は団体競技とはいえ、突き詰めて言えば、投手対打者の戦いの連続で勝敗を決める。また、守備位置も決まっていて、自由に動くわけではなく、局面ごとにセオリーがある。9人が一体となり、投手と打者とのひとつひとつの勝負を積み上げて勝つには、キャンプで段階を踏みながら必要とされる動きを体に染みこませていく。そして、実戦では正しい判断ができるようにしていく。多くの決まり事の下で行動する組織を束ねるには、やはり規律が必要だ。上下関係をはっきりさせることで組織として統率が取れるのではないか。

サッカーは11人全員がピッチに同時に立ち、一つのボールを使って90分間動き続ける。セオリーはあるが、敵もどう動くかはその時になってみないと分からない。監督が一つ一つの動きを指定できるわけではなく、練習で確認したことを礎にしつつ、臨機応変に対応しながらゴールを狙う。実際に、味方との意思の疎通で「あうんの呼吸」と言える完璧な連携は、90分のうち一瞬しか生まれないものだ。よりとっさの判断が求められるため、試合中のコミュニケーションが重要になる。わずかな時間でスムーズに意図を伝え合うことを考えても、厳しい上下関係よりも率直にものを言い合うことが重要になってくるのではないか。

新たな環境に身を置いて3カ月が過ぎ、プロ野球が開幕したが、競技ごとに異なる雰囲気を考えてみるのも面白いと感じている。

星田 裕美子(ほしだ・ゆみこ)2010年に共同通信入社。同年12月から大阪運動部勤務。主に陸上、サッカー、アマ野球を担当。14年12月からプロ野球オリックス担当。東京都出身。