面白い試みというよりか、独立リーグも結構すごいことをやっているなという思いである。

昨年12月、節目となる10年目のシーズンを終えた野球の独立リーグ、四国アイランドリーグ(IL)plusが2015年、つまり今年の6、7月に選抜チームを北米に派遣して、現地の独立リーグに参加して公式戦を行うことを発表したからである。

▽一石二鳥のアイデア

米国東海岸で展開する「カナディアン・アメリカン・リーグ」に所属して17試合を戦うもので、相手チームは四国ILとの試合は公式戦成績となる。

これとは別に元ロッテの渡辺俊介投手が昨年所属したアトランティック・リーグのチームとも交流試合も行うという。夏場は独立リーグにとって稼ぎ時とも思えるが、高校野球地方大会のまっただ中という事情があって、実は球場確保に苦労する。

四国ILはこの2カ月間を休みとして今年は前期、後期の2シーズン制にした。

▽まさにグローカルな展開

四国ILは昨年、もう一つの独立リーグである北信越のBCリーグと「日本独立リーグ野球機構」を立ち上げ、国内外のプロ野球リーグとの窓口としている。

両者は13年に一緒に米国本土で在米日本人や米国人を対象にトライアウト(入団テスト)を行っている。ちなみに海外トライアウトは四国ILの08年の台湾が初だった。

05年に発足した日本の独立リーグも10年経ち淘汰され、女子を除けば四国とBCが生き残っている。

この2独立リーグは優勝チーム同士による「グランドチャンピオンシップ」を戦うなど交流も活発で、なにより運営に当たる若いスタッフたちが“起業家精神"を発揮するなど次々とアイデアを出し、国内はもとより人脈を駆使して積極的に海外交流も進める。

その中から生まれたのが今回の北米遠征であろう。ドミニカや豪州、ミャンマーなどから毎年、選手を獲得していて常に世界にも目を向けている。

四国ILの鍵山誠CEOは世界の野球マーケットを意識した上で「四国をベースとするグローカルな展開」を目指し、選手には日本プロ野球やメジャーへの登竜門とし、またスポーツビジネスを目指す若者へ門戸を開いている。

四国IL4球団の半分が赤字経営を強いられるなど苦戦している。

1試合の観客の平均は約560人。それでも、徐々に地元に根付き、当初の目的でもあるプロ野球への人材送り込みはドラフト(育成ドラフトを含む)でこれまで約40人の指名を数え、08年にはメジャーのレッドソックスとマイナー契約を交わした選手まで出ている。

実力から言っても、プロ野球とは格段の差はあるが、その理念といい、一本筋が入っていると評価したい。

▽球界再編騒動から生まれた小説

四国ILの北米遠征を聞いて、12年に出された野球小説「球界消滅」(文芸春秋社刊)を思い出した。大筋は経営難の日本プロ野球をメジャーの極東地域に編入して生き残りを図ろうというもの。

巨人、中日、阪神、ソフトバンクと思われる4球団がメジャーに入り、残る球団も3Aや2Aのメジャー傘下に入るか日本の独立リーグの地域球団として再出発するという物語だ。

日本プロ野球と全く違う経営形態のメジャー参戦で球団の懐が潤うという構図である。

著者の本城雅人氏はネット等で「1990年代にパが一致団結してセとの交流戦をやろうとした時期に、ふと思ったのは、もしパが日本を飛び出してメジャーに行くといったら、セは腰を抜かすだろうと。プロ野球は人気低落で地上波では見られなくなり、TBSは横浜を売りたくても買い手がつかないときに、これは起こりうるなと」と話した。

もちろん現実はそうなっていない。横浜はDeNAになったし、昨年は広島の頑張りなどあり観客動員数も上昇した。しかし、今のような球団単体の経営形態ではいずれ頭打ちになるだろう。

12球団でつくった常設の「侍ジャパン」チームからも、世界戦略や構想などが見えてこない。改革に踏み切れない組織が発展しないのは自明の理である。

▽「つくってよかった」

日本に独立リーグをつくったのは元西武の石毛宏典氏であることは何度か紹介した。その石毛氏は満10歳となった独立リーグについて「野球を志半ばで辞めざるを得なかったり、経済的理由で続けられなかった若者にチャンスを与えたかった。逆にトライすることで自分の力を知り踏ん切りを付けた者もいただろう。そして四国に根を張って生きて行くことを選択できたかも知れない。まさに野球を通じた地方創生です。つくってよかった」と語っている。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆