スピードスケート・ショートトラックで注目のホープがいる。15歳の吉永一貴(愛知・名古屋経大市邨中)だ。昨年10月の全日本距離別選手権の1500メートルで優勝し、2018年平昌冬季五輪への成長が期待される。1月下旬から群馬県で開催された国民体育大会冬季大会では、日程の関係でショートトラックにエントリーできず、通常のスピードスケートである「ロングトラック」に出場した。

高校生が中心の少年男子500メートルと1万メートルに出場し、結果はともに予選落ち。本職のショートトラックとは勝手が違い、特に1万メートルはショートにはない未知の距離で、後半は膝に手を置きながら息も絶え絶えになり「しんどかった」と振り返った。普段は大会の直前以外はロングの練習をすることはないというが、国体後に出場した全国中学校スケート大会ではロングの3000メートルで優勝と、同世代の中ではトップクラスの力を持っている。あくまで軸足はショートと強調しつつ「両方頑張っていけたら」と“二足のわらじ"を続けることに意欲的だ。

スピードスケートではロングとショートのどちらもこなす選手は珍しくなく、12年の第1回冬季ユース五輪では女子の菊池純礼(現トヨタ自動車)が両方でメダルを獲得した。吉永の母で、現役時代はショートの国際大会で活躍した美佳さん(旧姓加藤)は「私たちの時代はみんな両方やっていた」と話す。

同じスピードスケートとはいえ、この2種目で求められる滑りは違ってくる。ショートのリンクは1周がロングの約4分の1でコーナーの占める割合が高くなり、集団でレースをするため駆け引きも重要な要素となる。使用するスケート靴も異なるため、履き替えると「慣れるまでは違和感がある」(吉永)という。どちらか一つに集中した方がいいのでは、という意見もありそうだが、美佳さんは掛け持ちにはメリットがあると指摘する。直線が長いロングを滑ることで「しっかり氷を蹴る感覚をつかめる」といい、ショートでもトップスピードを上げることにつながると説明した。吉永も「筋肉の使い方が参考になる」と話した。

昨年のソチ五輪では、女子のヨリン・テルモルス(オランダ)が両種目に出場。本職のショートで培ったコーナーワークを武器に、ロングの1500メートルを五輪新記録で制して話題を呼んだ。吉永の“二刀流"の挑戦に注目するとともに、低迷する日本のスピードスケート界に、テルモルスのような「型破り」の滑りを見せてくれるスケールの大きな選手に成長することを期待したい。

中嶋巧(なかじま・たくみ)1983年生まれ。仙台市出身。2007年7月共同通信入社。松江支局、大阪支社経済部を経て13年2月から運動部へ。アマチュア野球を中心に冬季競技など取材。