元世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級、フェザー級の2階級を制した長谷川穂積(真正)が1月14日、現役続行を表明した。同選手は昨年4月、国際ボクシング連盟(IBF)スーパーバンタム級王座に挑み、7回TKOで敗れて3階級制覇に失敗。このまま引退するのではと見られていた。

しかし、「まだ引退するタイミングではない。もう少しだけボクシングをさせてもらいたい」と再起を決意。34歳という年齢を考えると「いばらの道」が待っている可能性も高い。

あえて試練の選択をした名ボクサーのファイティングスピリットは驚異の一言である。

昨年の世界挑戦はショックな内容だった。IBF王者キコ・マルチネス(スペイン)に挑んだが、中盤からスタミナ不足が明らか。最後は精根尽き果てたような格好でTKO負けした。

長谷川の全盛期を知るファンの間からは「もうグローブを置いてほしい」という切実な声が聞かれた。私もそう思った。バンタム級の王座を10度も守ったときの華麗な連打の面影はない。当時とはまるで別人のような長谷川の姿があった。

しかし、本人は納得がいかなかったのだろう。5月にも世界ランカーと再起戦を行う予定で、元気に7日、沖縄合宿に出発した。

キャンプでは1日に20キロを走る計画があり、まずはスタミナ養成が課題。「相手が決まっていないので、気持ちの入れ方など難しい面もある。ただ、トレーニングは積むしかない」と決意を披露した。

初心に戻って徹底的に走り込む。果たして、その先に夢(3階級制覇)をつかむことができるのだろうか。

思い出すのが“浪速のジョー"こと辰吉丈一郎(大阪帝拳)だ。1994年、薬師寺保栄(松田)とのバンタム級王座統一戦に敗れ、引退濃厚と見られた。

しかし、敗戦をさらに重ねてもリングに立ち続けた。そして、97年、WBC王者シリモンコン・ナコントンパークビュー(タイ)を7回TKOに下し、3年ぶりに頂点へ。鮮やかな勝利にファンは酔いしれた。

昔から「ヒーローの引き際」の難しさは語り継がれているが、辰吉のような例もある。ボクシングの醍醐味といえるだろう。

長谷川のカムバックはどういう結末になるのだろうか。ボクシング専門誌のオールタイムランキング企画で国内2位に選ばれ、長谷川は「素直にうれしかった」という。過去の輝く栄光。最後にどういう「力と技」を見せてくれるのか。注目したい。(津江章二)