「最優秀選手」の基準をどこに置くか。人によって見解の分かれる、難しい問題だと思う。国際サッカー連盟(FIFA)は12日、2014年の最優秀選手「FIFAバロンドール」にポルトガルのFWクリスティアノ・ロナルド(レアル・マドリード)を選んだ。母国の英雄が2年連続3度目の受賞を果たして大騒ぎするポルトガル報道陣を横目に、若干釈然としない思いも残った。

一見すれば、妥当な選出とも言える。ロナルドは欧州チャンピオンズリーグ(CL)でレアル・マドリードに12シーズンぶりの優勝をもたらし、史上最多となる「デシマ(10度目の優勝)」達成の立役者になった。CLの13試合で大会最多記録を更新する17得点をマークしたのをはじめ、スペイン1部リーグでも得点を量産。常人離れしたそのスピードや正確で強烈なシュートなど、華のあるプレーは何度現場で目にしても記憶に焼き付く。一人のアスリートとして「最優秀」に値するパフォーマンスを見せたことは間違いない事実だ。

一方、2014年はワールドカップ(W杯)ブラジル大会が行われた年であり、W杯で優勝したドイツの強さは印象的だった。もともと勤勉で労を惜しまないドイツの選手たちが、南米の選手たちに大きく引けを取らない技術や戦術眼を身につけた結果、圧倒的な強さを示した大会だったと思う。その中でもバロンドールの最終候補3人に残ったGKマヌエル・ノイアー(バイエルン・ミュンヘン)は、

まさに守護神と呼ぶにふさわしい堅守を披露した。特にペナルティーエリアの外に飛び出し、最後尾のフィールドプレーヤーとしてピンチの芽を次々と摘み取っていったプレーは、GKの新たな可能性を示したという点で画期的だった。

それだけに、ノイアーがロナルドの半分以下の支持しか得られず、アルゼンチンのFWリオネル・メッシ(バルセロナ)よりも低い評価だったのは、かなり意外な結果だった。同様の感想を抱いた記者は私だけではなく、翌日に話をしたギリシャの記者は「これじゃあ、ただの人気投票だ」とあきれたように肩をすくめた。

GKには得点という分かりやすい指標が残らない。しかし、サッカーがゴールを奪い合うスポーツである以上、同じぐらいゴールを許さないことにも価値があるはずだ。さらに、CLの価値の高さは言うまでもないが、W杯は4年に1度で、しかもクラブチームより強化の難しい「代表」という選抜チームでの戦いだ。オリンピックの金メダリストと同様、その頂点に立つ困難さとそのすごさは誰もが

認めるところだろう。

これで、バロンドールは7年連続でロナルドとメッシのどちらかが受賞する結果になった。この2人を上回るために、どんなパフォーマンスが必要なのだろう。そして、チームスポーツであるサッカーにおける「最優秀選手」とは何だろうか。その問いの答えは、簡単に見つかりそうにない。

日高 賢一郎(ひだか・けんいちろう)1976年生まれ。2001年共同通信社入社。大阪運動部、広島支局、東京運動部を経て13年からロンドン支局。国内では主にプロ野球の広島、巨人などをカバー。サッカーは昨年のブラジル大会などW杯を取材し、女子W杯は11年ドイツ大会で優勝した「なでしこジャパン」を担当した。