昨年12月中旬に担務が変わり、サッカー担当デスクとなった。まさにその初日、現地時間15日に日本代表のアギーレ監督が、スペインでクラブチームを率いていた時代の八百長関与疑惑で検察当局に告発された。当日夜はお世話になった方の転勤に伴う送別会の予定が入っていたが、結局会社を出たのは11時すぎ。何とか二次会途中から参加できたが、前途に漂う暗雲を感じた1日となった。

今回のアギーレ監督の一件では、日本サッカー協会の対応のまずさが指摘されている。告発直後、記者会見したのはコミュニケーション部長(広報部長)のみ。大仁邦弥会長は発言を避け、監督の招聘に携わった原博実専務理事は「ノーコメント」と繰り返した。原専務理事は18日の協会理事会後の会見で、アジア・カップ(杯)をアギーレ監督が指揮する方針を示すなどこの件について公の場で語ったが、大仁会長は記者の囲み取材にこそ応じたものの、正式な会見の場は一度も設けていない。

難しい問題だと思う。告発されたとはいえ、まだ疑惑の段階。スペインの司法制度では告発が裁判所に受理された後で本格的な捜査が開始され、その後嫌疑が固まれば起訴される。有罪、無罪といった判決が出るまでにはさらに長い時間がかかるとみられている。監督自身が「有罪を証明されるまでは何人たりとも無罪だと思うので、仕事をする権利はある。推定無罪は法によって定められている」と話したように、日本協会としても疑いの局面では動きようがないだろう。ただ、アジア杯でも外国人記者から八百長疑惑の質問がアギーレ監督自身にぶつけられたように、この先、2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会のアジア予選を戦う上で、八百長というスポーツの根幹に関わる問題を抱えた監督が指揮を執る弊害は目に見えている。

私は記者時代、日本サッカー協会や日本野球機構(NPB)を取材した。両組織の構造や機能は異なる面があるものの、各競技のトップの位置にあるのは間違いない。そのかじ取りは影響力があり、だからこそ本当に大切なものだと痛感させられた。

12年、NPBはコミッショナーの再任問題や、翌年に控えたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の監督選考の迷走に揺れた。13年には統一球を飛びやすく変更しながら公表していなかった問題が発覚してコミッショナーの責任が厳しく追及され、世間を騒がせた。一連の騒動の中である球団幹部が言っていた言葉が心に強く残っている。

「結局はどこを向いて仕事をしているかだと思う。われわれは夢を売る仕事をしているんだから、ファン、特に子どもたちを幻滅させるようなことをやっては絶対に駄目だ」

アギーレ監督の問題でも、今後の展開次第では日本協会が新たな決断を下さなければならないときがくるだろう。告発が受理されたときなのか、起訴されたときなのか、それとも判決後なのか。いずれにしても、その決断に伴い、監督を任命した側の責任も問われることがあるだろう。その際には自らの保身などではなく、まずファン、子どもたちのことを考えてほしい。心の底から日本代表を応援できるように。

山本 地平(やまもと・じへい)1973年生まれ。横浜市出身。2008年3月、他社の運動部記者から共同通信社に転身。大阪支社で遊軍をした後、09年5月から東京運動部でサッカー、12年1月からプロ野球を担当。同12月からデスクを務めている。