時間の流れに対する感覚は、人それぞれだろう。50年以上生きていると、個人的には半年前はついこの間のような気がする。それでも6月から7月にかけてブラジルで行われたW杯に関しては、ものすごく過去の出来事だったような気がする。日本代表のふがいない戦いを忘れ去りたいからだろうか。

2014年が終わろうとしている。今年の日本のサッカーを振り返ると、厳しい見方だが、進歩の速度がかなり遅くなっているような気がする。確かに部分的に切り取ると、それなりに感動する場面に出くわした。一方で、このスポーツが国内でとどまるものではなく、最終的に世界を相手に勝負していく種目だということを考えると、危機感を抱かずにはおれない。

U―20日本代表の4大会連続のアジア予選敗退。加えてここのところの年代別ワールドカップ(W杯)では注目される戦いを演じていたU―17日本代表も、アジアで足をすくわれた。「育成年代は勝負にばかりこだわるのはいけない」という人もいるだろうが、代表チームは違う。若い年代からワールドカップに出場するに越したことはないし、体験としての知識を得るのに若過ぎるということはない。若い時代に刺激を受ければ、その後の取り組み方も確実に変わってくるからだ。

疑問に思うことがある。この国の指導者や選手は、サッカーとは「ゴールを奪う」「失点を防ぐ」「トータルのスコアで相手を上回る」という競技だということを理解しているのだろうかということだ。これはアンダーカテゴリーだけでなくA代表にもいえるのだが、彼らはゴールを奪うよりも、ボールを保持する方が優れたサッカーだと勘違いしているのではという場面にしばしば出会った。それはW杯のギリシャ戦を見て、多くの人が感じたことだろう。

技術、戦術は確かに重要だ。加えてそこに戦う心がなければ、良い結果を得ることはできないし、人々を感動させることもできない。くしくもJ1昇格プレーオフを制したモンテディオ山形の石崎信弘監督が、皮肉を交えて「たぶん日本サッカーの育成の部分は間違っていないんだろう」と前置きしながら、次のように述べていた。

「ただ、やはりそれ(戦術や技術)だけに固執しても気持ちの部分がないと勝てない。いまでも下の年代では(アジア予選を)突破できない」

昨年、中国でU―18年代の指導を行っていた石崎監督の、気持ちがなければ技術は出せないという言葉に、きれいなサッカーばかりを目指す現在の日本の指導者は耳を傾けなければいけないだろう。

誰もが器用になんでもこなせる。素晴らしいことではあるが、逆にこれをやらせたらあの選手は誰にも負けないという選手が現在の日本には見当たらないのも事実だ。いわゆるスペシャリストの存在だ。そしてサッカーの勝敗を左右するのは、攻撃以上に守備のスペシャリストが存在するかどうかで決まることが多い。

その意味で現在の日本が一番劣っているのは、W杯ブラジル大会を見るまでもなくセンターバック(CB)とGKのポジションだろう。稚拙さが一発で失点につながるこのポジションに優れた選手を配することができるかどうかが、今後の国際舞台での成績に直結してくる。

先日、都内で開催されたトークショーで元日本代表のCB秋田豊さんが興味深いことを語っていた。

「現在の日本のCBは前線にボールをつなぐフィード力が注目されているが、本来の役割である相手FWに仕事をさせないという守備力が劣っているような気がする」

2度のW杯に出場し、鹿島アントラーズでも多くのタイトルを獲得している守備のスペシャリストから見れば、日本代表にしても失点の場面があまりにも淡泊に映るのだろう。そして1点を失うことをかたくなに拒む強固な意志を持った守備の職人が、勝敗を左右すると訴えたいのだ。これは、CBばかりではなくGKにも当てはまる。守備の選手は、より専門性を高めなければいけないポジションなのだ。

確かにサイズの求められるCBとGKに関しては、日本は人材難だ。高身長で運動能力に優れる素材は限られるからだ。ただプロ野球を見れば、大型で素晴らしいパフォーマンスを発揮している選手が数多くいる。その意味で野球の育成スカウト網の方がサッカーより優れている気がする。これからはサッカー界も集まってくる人材だけに頼るのではなく、集めるという活動にも積極的に関わっていかなければいけないだろう。

これらの問題を解決するのには、目先にとらわれるのではなく、長期的な視野を持った取り組みが必要だ。それは簡単なことではないのだが。

アジアのなかもいち早くプロ化を進め、20数年。日本のサッカーは目覚ましい進歩を見せてきた。しかし、W杯5大会出場を果たした現在、ある程度の成果は残したが、停滞の時期に迷い込み始めた。そして転換が求められているのではないだろうか。事実、アジア諸国の長足の進歩を見ると日本が保ってきたアドバンテージは、さほど大きいものではなくなってきたように思える。

このままでは日本のサッカーは危うい。「最強」といわれながらも惨めなW杯での敗戦を喫し、年末にはアギーレ問題が始まった2014年。それらのネガティブな要素は、もう一度、日本のサッカーに携わる者たちに、真剣に足元を見つめ直しなさいという警鐘なのかもしれない。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。