なんとも間の抜けたシーズンが終わった。国内最高峰の大会であるJ1リーグ。優勝の可能性を残した3チームが、最終節で1チームも勝利を収めることができなかった。

2位浦和レッズと3位鹿島アントラーズは敗戦。唯一、勝ち点を得た首位のガンバ大阪も0―0の引き分けだ。相手が最下位の徳島ヴォルティスであることを考えると、ちょっと情けないシーズンの幕引きだった。確かに34試合の積み重ねでタイトルを争うのが、J1のリーグ戦ではあるのだが。

今シーズン、優勝したガンバが獲得した勝ち点は63。J1が1シーズン制になった2005年以来の10年間で2番目に低いポイントだ。(最少=05年ガンバ、60点。63点は他に08年の鹿島、13年のサンフレッチェ広島)。全勝で102点を稼げることを考えると、J1は6割の勝ち点でも優勝を飾ることのできるリーグということだ。

ガンバの優勝そのものは、疑いなく称賛に値する。ただ昨年、最終節で横浜F・マリノスが敗れたことで連覇を飾った広島の森保一監督の微妙な笑いが思いだされる。

「こんなに負けても優勝できるリーグは、他の国にはないよね」

その言葉通り、Jリーグは世界的に見ても特異なリーグだろう。J2から昇格したばかりのガンバが、11年の柏レイソルに続いて優勝。フォルランを獲得し、誰もが優勝候補と予想した昨年4位セレッソ大阪のまさかのJ2陥落。どのチームにも優勝のチャンスがあるというのは、各サポーターに希望を与えられることなのだろうが、国内に安定した強さを誇るチームがいないのも、それは寂しい。個人的には小憎たらしいほどの強さを誇る「ヒール」がいて、その鼻を明かすチームがあるのが望ましい。毎節、ガチのつばぜり合いが繰り広げられれば、淡泊な内容で試合を落とす、このところの日本サッカーにもたくましさが出てくるのではと思うのだが。

ヒールになりそうで、なり切れない。そういうクラブがある。日本最大のサッカー専用スタジアムを持ち、スタンドは常に赤いサポーターで埋め尽くされている。他チームから見れば、浦和のサポーターと、それを取り巻く環境は間違いなくヒールだろう。それも良い意味での。なぜならアンチ浦和の人々の心根をのぞけば、間違いなく「自分たちもこのような立場になりたい」と思っているはずだからだ。

ただ、浦和が真のヒールになり切れないのは、肝心のチームが実績を伴っていなからだ。確かに弱くはない。今シーズンも34節中20節を首位に立った。しかし、第33節で首位から陥落すると、最終節では徳島の踏ん張りで、再逆転の奇跡が起きかけたのに、むざむざとそのチャンスを逃した。まさに自滅だ。試合後の埼玉スタジアムには、サポーターのタメ息と怒りばかりが満ちていた。

昨年も優勝を狙える2位につけながらも最後の3試合を3連敗。そして、今年も首位で臨んだ残り3試合に1分け2敗。一番大切な締めくくりの時期における詰めの甘さは、「学習能力がない」といわれても仕方のないことだ。

もちろん一番の責任が選手たちにある。ただ、その選手たちをコントロールすることのできないペトロビッチ監督にも大きな問題がある。目の前にタイトルがちらつき始めると、監督自身が混乱してしまうのだ。

記者会見で語られる指揮官の言葉は恨み節ばかりだ。ガンバ戦の李忠成に対する今野泰幸のプレーに「あれはPKだった」と判定に異を唱えたかと思うと、「たとえ退場をしてでも勝ち切らなければいけない。日本の選手はもっと意識を変えていく必要がある」などなど。聞いていて、気持ちのいいものではなかった。

確かに普段のペトロビッチ監督は、温和な性格で好感の持てる人柄だという。優れた指導者でもあるのだろう。ただ、プロの勝負師ではない。日本での9年間で得たタイトルがJ2優勝だけというのは、そのせいだろう。勝つチャンスは十分にあったはずだ。

浦和は日本のなかでは特別なクラブだ。一部の選手は「浦和のようなビッグクラブは」という言葉をよく口にする。でもリーグ優勝はまだ一度しか成し遂げていない。それを考えれば、浦和がビッグなのはスタジアムやサポーター、他のチームから主力選手を引き抜いてくる資金力だけだ。本当のビッグクラブというものは、成績が最初に来るものだ。

浦和というクラブの先行きが心配だ。生え抜きといえる選手は最終節の先発を見ても、平川忠亮と宇賀神友弥の2人だけ。あとは他のクラブから引き抜かれてきた選手だ。そのような選手にサポーターの思い入れは、正直深くはないだろう。追い打ちをかけるように、ペトロビッチ構想から外れたユース育ちの山田直輝も来年は湘南ベルマーレに移籍するという。地元色は、ますます薄まる。だからこそサポーターの気持ちをつなぎ留めるために、タイトルを取り続ける必要があるのだが。このままでは浦和というクラブ自体が、自らのサポーターのヒールになりかねない。

浦和がチャンスを見す見す逃した翌日、モンテディオ山形がJ1昇格プレーオフ決勝戦を制した。最大の立役者となったのは今年6月まで浦和に13年半所属していたGK山岸範宏だった。その守護神はシーズン終盤の山形の変化について次のように語っていた。

「自分で(チームを)変えたとは思っていない。浦和で学んだことを伝えただけ」と。

自クラブからは伝わってこない「Pride of Urawa」。誇りが継承されているのが、他チームというのはなんとも皮肉なことだ。浦和のサポーターはどのような気持ちで見ていたのだろうか。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。