2014年のモータースポーツにおいて、新たな歴史が刻まれた。トヨタが世界耐久選手権(WEC)最高峰クラスのLMP1でドライバーズとマニュファラクチャーズ(製造者部門)の2冠を獲得したのだ。

1953年にスタートした耐久レースの世界選手権は名称こそ変遷しているものの、F1に劣らない歴史を誇るシリーズ。ここまで日本メーカーのタイトル獲得はなかったが、62年目にしてついに頂点に立ったことになる。トヨタ・レーシングの木下美明代表によると、F1を筆頭に国際自動車連盟(FIA)が運営する各世界選手権の表彰が行われる「FIAガラパーティー」で、ひとつ印象に残ることがあったという。

「壇上から見ると、世界各国の自動車連盟代表が席についているわけです。このような場所は初めてだったのですが、そのなかでトロフィーをもらうという状況に『ワールドチャンピオンというのはこういうものか』と実感しました」

世界一を目指す―。どんな世界であってもそこへ至る道は平たんではない。今季のトヨタは、WEC創設から2年連続2冠の王者アウディ、新規参入ながらも過去の耐久レースにおいては一番の実績を誇るポルシェと激しく争ってきた。だが、木下代表によるとその戦いはサーキットに限らないという。

「各チームが集まって行う毎年のレギュレーション交渉は本当にシビアです。口論にとどまらず、机をたたいたり蹴り上げたり…。ここで引いてしまうとレースの前に勝負が決まってしまうだけに、それこそ激しくやりあいます。でも、そうしたやりとりやレースでの競い合いがあるからこそ、すべてが終わったときにはラグビーで言うノーサイドの心境になれる。シーズン終了後の全体パーティーで、なぜか私が年間最優秀賞を頂きました。その理由は『トヨタはどのメーカーもハイブリッドカーでのレースをやろうなんて考えず、出場できるレースすらない2006年、無謀謀にも挑戦を始めた。そして今年世界王者になった。その勇敢な姿勢に最優秀賞を与えます』。WECというレース村の住民として、トヨタが受け入れられていることが分かり、本当にうれしかった」。

15年シーズンは新たに日産自動車のLMP1参入が決定。トヨタ、日産、ポルシェ、アウディという四大メーカーがしのぎを削る豪華なシリーズになる。世界を舞台に日本車メーカー同士がトップを競う姿を早くこの目で見てみたいものだ。(モータージャーナリスト・田口浩次)