阪神のFA選手、鳥谷の去就が注目されている。メジャー入りがすんなり決まらないのは、その遊撃手というポジションにありそうだ。

日米の野球の実力差は縮まっているとよく言われる。昔のように負け続けることはなくなったが、内野守備はまだ大きな差があると思う。

肩の強さと柔軟な動きは真似ができない。特に日本人遊撃手が米国で活躍するにはまだ時間がかかりそうだ。

その原因を探っていくと、小学生から大学生に至る、その指導法に問題の一端がありそうに思えるからである。

▽ゴールデングラブ賞

なにもメジャーへ行くために野球をやっているのではないが、勝敗を分ける守備の面白さをプロ野球はもっと評価した方がいいと思っているからである。

守備のベストナインに当たるゴールデングラブ賞の顔ぶれを見て、打撃成績に引きずられていると思う時があるからだ。

出場試合数は加味するとしても、守備のスペシャリストに限定すべきだろう。メッツやアストロズなどに7年間在籍した松井稼(現楽天)は、強肩はメジャーでも評価されたが、それでも通算出場は630試合と年平均90試合ほどと、遊撃手としては準レギュラー級だった。

井口(現ロッテ)岩村(現独立BCリーグ)西岡(現阪神)らも海を渡ったが、内野手として常時活躍することはなかった。

オリックスに復帰した中島はメジャー2年間で出場なし。ブルージェイズで人気者だった川崎はマイナー契約での再出発を余儀なくされた。

▽内野手の華

かつてプロ野球では「内野手の華は遊撃手」と言われたものだ。少々打力には目をつぶっても、各球団はこの要のポジションを固めたものだ。華麗な守備、名人芸といわれるグラブさばきができる職人技にファンは大喜びした。

ロッテの伊東監督は2012年の1年間、韓国プロ野球の斗山でコーチした。

帰国後に「韓国プロ野球を見るとき、ぜひ遊撃手の肩を見てほしい」と話した。どんなときでも一塁で速い球を投げる。単にアウトにするだけではなくプロとしてファンにアピールするためだという。

ファンを楽しませるプレーがもっとあってもいいと思うし、それをマスコミがもっと取り上げれば、守備を見る楽しみが増すというものだ。メジャーでは「守備防御点」といって、守備力の勝利への貢献度を表すものが数値化されつつある。

▽怒られるプレー

この秋の日米野球。メジャーの二遊間でトスされた送球を素手で取って併殺を狙うプレーがあった。それを見た日本選手が「あんなプレーをしたら怒られる」と話した。高校生ではない。プロの選手である。

子どもの頃から内野の守備は「ゴロは真正面で両手で」とか「送球は必ず上から投げる」と基本をたたき込まれてきた。

それは間違いではないが、こんな例はどうだろう。二の腕を使うスナップスローはプロなら誰でもできそうだが、大抵の選手は高校、大学でも「基本ができるようになったら次に教える」と言われ続ける。

だから、いつまで経っても手首を使って横から投げたり、三遊間の深い位置から下半身を使わず上体だけで送球したりするクイックで力強いプレーができない。

オリックスで監督を務めたメッツのコリンズ監督が鳥谷に対し「メジャー流に適応できるかどうかが鍵だ」とエールを送っている。

「日本の内野手は正面に入っての捕球が染みついているが、それでは間に合わない。捕球する姿勢は重要ではない」と話し、逆シングル捕球やジャンピングスローができる体の強さと柔軟性が必要だと指摘した。

米国では子どものころからゴロを素手で捕ったり、横から投げたりする練習をさせている。だから、かつてカージナルスで活躍したオジー・スミスのように軽業師を思わせる選手が出現するのである。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆