米大リーグでは、ことしも岩隈久志(マリナーズ)や田中将大(ヤンキース)ら投手を中心に日本人選手が活躍した。野手は青木宣親外野手(ロイヤルズ)がワールドシリーズ進出に貢献する働きを見せたが、内野手は最多出場が川崎宗則(ブルージェイズ)の82試合で、定位置をつかんだ選手は現れなかった。WBC元日本代表の中島裕之(アスレチックス傘下)や2億円プレーヤーだった田中賢介(レンジャーズ傘下)は壁にぶつかった。過去にもホワイトソックスのワールドシリーズ優勝メンバーの一員となった井口資仁(ロッテ)や、7シーズン内野手を務めた松井稼頭央(楽天)らの例はあるものの、日本で中軸を担った大物が海を渡ると脇役に甘んじてしまう。なぜ、内野手は苦戦するのか。

プロ野球広島で活躍し、日米でスカウトを務めたフィーバー平山氏は「日本球界は投手に良い人材が集まる傾向がある。野手は攻守両面でパワーが問題になる」と分析する。内野は深い位置や崩れた体勢から送球するためのパワーが必要になる。捕球してノーステップで送球するのは当たり前で、日本流に捕球、ステップ、送球の3段階では間に合わない。攻撃面でも、守備負担の少ない一塁手や三塁手には長打力が求められ、二塁手も打力のある選手がいる。

よく言われるように、芝生の違いも大きいようだ。米国で主流の天然芝について、田中賢は「バウンドごとに打球の勢いが落ちる。守備は前に出て処理して、打撃はより強い打球を打つ必要がある」と話す。打者走者の一塁到達タイムは速く、凡打でも際どいプレーで強肩ぞろいの内野手と競う。

渡米する選手のタイプについて指摘するのは、日米で投げた長谷川滋利氏だ。「日本で不動の4番打者でも米国では並みのパワーになり、走攻守三拍子のそろった人は特徴のない選手になる。いぶし銀タイプの2番打者や、守備の人、一芸型の方が重宝される」と指摘する。

ロイヤルズ打線で2番を務めた青木は、考える野球が真骨頂だ。打席では1球ごとに打撃内容を変える。一発長打を狙ったかと思えば、自身がアウトになって走者を進める。相手野手の位置取りを見ての狙い打ちや、スリーバントも得意だ。他人と違う能力を発揮した青木は「確かに外野の方が日本人に向いているかもしれないけど、メジャーで通用する日本人内野手はいますよ」と力説する。

ヤンキースやヤクルトなど日米で内外野を守ったレックス・ハドラー氏も「日本には知的な選手が多く、メジャーでもニーズは高い。自分が試合の主導権を握れる投手と違い、野手は違うスタイルに適合できるかがポイント」と話す。ナイター終了後に次の目的地に出発して翌朝に到着する長距離移動や時差、6か月間で162試合の過密日程、どう猛さすら感じさせる力勝負など、大リーグには戸惑うことも多い。

中4日の先発投手や運動量の比較的少ない外野手と違い、瞬発性の高い動きが連日求められる内野手はコンディショニングも厳しくなる。生活や文化の変化も含め、フィールド内外での適応力がより要求されているのではないか。米国での壁を乗り越え、何とか日本人の内野手にもメジャーで「顔」になってほしい。

伊藤 光一(いとう・こういち)1972年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。共同通信入社後、社会部、大阪社会部で事件・事故取材など担当。2009年から東京運動部でラグビー、プロ野球などを担当し、13年からロサンゼルス支局でスポーツを取材。