F1の今季最終戦、第19戦アブダビGP決勝が23日に開催される。総合王者争いはともにメルセデスのニコ・ロズベルク(ドイツ)とルイス・ハミルトン(英国)の一騎打ち。果たして勝利の女神はどちらにほほ笑むのか、最後まで見逃せないシーズンとなった。

その一方で、今年はさまざまな出来事があった。V6ターボエンジンの復活、飛躍的に伸びた燃費、小林可夢偉の復帰参戦、そして参戦費用が尽きたマルシアの消滅…。最終戦を前に、マルシアと同じように第17戦からの2戦を回避したケータハムも消滅と思われていたが、一転、復活参戦が決まった。

しかし、この復活劇は消える寸前にろうそくが見せる一瞬の輝きのようなものだ。7月にチームオーナーが変わったケータハムはすでに全資産を管財人に差し押さえられ、第16戦ロシアGP後は活動資金も無くなっていた。負債総額は約2000万ポンド(約36億5千万円)ともいわれる。

アブダビGPの活動資金は、新たな買い手探しのアピールを兼ねたクラウドファンディングで235万ポンド(約4億3千万円)を集めるという奇策だった(寄付金は、その約半分が集まったところで目標を達成したと発表。さらに寄付金の募集期間を延長した)。ところが、発表したその日にチームは7週分の賃金未払いのまま全スタッフへ解雇通知を行った。この先、買い手が見つからなければ、アブダビGPがケータハムとしてのラストグランプリとなる可能性が高い。

そんな中、可夢偉もロシアGP以来のF1走行となる。チーム状況同様、来季への展望がまったく見えないまま最終戦を戦う本人は吹っ切れたかのように「思い残すことのないレースをしたい」と語った。そして、親しい友人たちには「これがF1で最後のレースになるかもしれない」と話しているという。これまでも、可夢偉は常に目の前のレースを全力で戦い、後悔することがない走りを目指してきた。その姿勢は、トヨタのマシンでも、ザウバーのマシンでも、そしてケータハムのマシンでも変わることはなかった。

運に恵まれたのでも、最高のマシンを与えられたのでもない。その実力だけで日本GPで3位となり、表彰台で母国ファンと喜びを分かち合った可夢偉。日本のモータースポーツ史に残るドライバーが国内企業などからの支援を受けることなくF1を去るとしたら、日本人ドライバーによるF1初勝利への道のりは、再び大幅な修正を強いられるに違いない。(モータージャーナリスト・田口浩次)