今年の年末は、ボクシングファンにとって目が離せない興行が続く。何と12月30日、大みそかと2日連続で世界タイトルマッチが開催されるのだが、最も興味深いのが30日に井上尚弥(大橋)が2階級制覇へ挑む一戦だ。

井上は現在保持している世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級王座を返上し、2階級上のスーパーフライ級に狙いを定め、世界ボクシング機構(WBO)のベテラン王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)に東京体育館で挑む。天性のスピードを生かしたアウトボクシングに注目である。

井上は今年4月、国内最速の6戦目で世界王座を獲得、9月には初防衛に成功した。しかし、約10キロの過酷な減量と戦っており、その厳しさから解放されるのは大きい。

本人も「スーパーフライ級は適正階級だし、最大限に力が発揮できる。どうせ挑むなら一番実績のある強い王者とやりたいと思っていた」と言葉を弾ませる。その心意気は頼もしいばかりだ。

確かにナルバエスの実績はすごい。サウスポーのボクサーファイターで、アトランタ、シドニー両五輪に出場した後、プロ転向。WBOフライ級を16度防衛、同スーパーフライ級王座も11度防衛中。安定感は抜群で、「ハリケーン」と呼ばれる連打に定評がある。

不安材料は39歳の年齢が挙げられる。さすがに全盛期の迫力は欠けてきた。試合が後半にもつれ込み、スタミナ勝負になると高齢がネックになるかもしれない。

キャリア十分の名王者に対し、井上はスピードで攻略したい。軽いフットワークに乗り、たたき込む左右コンビネーションは圧巻。プロで対戦する初のサウスポーとなるが、井上のセンスを見る限りそう心配はいらないだろう。

試合は初回から激しい攻防が予想される。ナルバエスは左右フックでボディーを狙ってくることが予想されるが、井上もボディー攻撃で応戦するはずだ。高度な打ち合いは必至とみる。

ポイントは中盤からの主導権争いだ。ナルバエスのアタックを見極め、井上がペースを握れるかどうか。39歳の王者に対し、21歳の井上。若さが勝負を決めるような気がする。

熟練の技を、井上ならかわすことができるはずだ。勝てば井岡一翔(井岡)の持つ2階級制覇の最速記録(11試合)を塗り替える8戦目での快挙となる。歴史的な瞬間を楽しみに待ちたい。(津江章二)