最近、仙台の気候は心地よい。肌寒くはなってきているが、暑がりの私にはこのくらいの風がちょうどいい。透き通るような青空のもと、すがすがしい気持ちで「職場」に向かう。行き先は、担当しているプロ野球楽天の本拠地、Koboスタジアム宮城だ。

チームは現在、秋季練習中だ。キャッチボールでの捕球音、守備練習で捕手が状況を確認する声、打撃練習での打球音、その打球がスタンドではねる音が、秋晴れの天気の下でよく響く。ぽかぽかとした陽気の中、練習を見ている。これが仕事の一つであるから、記者とは何と幸せな職業であろうか、とも思う。でも、昨年の秋とは気分が違う。誤解を恐れずに言えば、どうも張り合いがないのだ。優勝争いにも絡めず、最下位に終わったチームのシーズンオフは、もの寂しい。

1年前は、そんなことは思えないぐらいの状況だった。球団創設9年目で初のリーグ優勝を果たし、クライマックスシリーズも突破。星野仙一前監督の永遠のライバル、巨人との日本シリーズに臨んでいた。11月3日、偶然すぎる巡り合わせ。東日本大震災が発生した3月11日の日付をひっくり返したその日、前日に160球で完投したエース田中将大が、リリーフ登板で九回のマウンドに向かう。登場曲の「FUNKY MONKEY BABYS」の「あとひとつ」を、観客が大合唱して迎える。そして、田中が最後の打者を三振に仕留めて悲願の日本一。映画でも見ているかのような場面が何度もあった。野球に限らず、プロスポーツはどれだけ見る人を熱狂させられるか、ということをあらためて感じた。

退任した前任者に代わり、大久保博元氏が2軍監督から昇格し、チームは来季へ向けてスタートした。大久保新監督は「常勝軍団になるには厳しい鍛錬が必要」と秋季練習から早速、早出練習の「アーリーワーク」を導入。各選手の課題克服を目的とし、ベテランにも参加を促している。全体での投手と内野手の連係守備練習では、バント処理と一塁ベースカバー、二塁けん制と3ケ所に分かれ、時間で区切ってローテーションする方式をとるなど、効率的に質と量のバランスを配慮した練習をしている。メディアへの非公開練習も行い、サインプレーにも積極的に取り組んでいる。

11月からの岡山県倉敷市での秋季キャンプでは、今よりも濃密な練習が待ち受けていることだろう。星野前監督は今シーズン中、低迷している状況を嘆きながらも「今の戦力でも3位には入れる。差は意識の違い」と話したことがある。「開花は春じゃない。(花は)秋に咲かせるものだ」とも言っていた。

来シーズンに向け、選手がことしの結果を心底悔しがり、それぞれの課題を克服しようとする姿を取材できることを楽しみにしている。来年のこの時期、楽天はどんな花を咲かせているのだろうか。

佐藤 暢一(さとう・まさかず)1984年生まれ、神奈川県横浜市出身。2009年に共同通信に入社し、大阪運動部で大相撲などを取材。12年からプロ野球楽天を担当。