この国のリーグ戦は、成熟度に欠けるのか。それとも好意的に解釈すれば、予想のつかないエキサイティングなリーグなのか。J1も第30節を終え、残り4節。徳島ヴォルティスのJ2降格が決まったとはいえ、優勝争いに加え、残り二つのJ2降格回避を巡る争いもいまだ混迷。最終節が終わってみなければ、結果が見えないというのが正直なところだ。

シーズン開幕前にさまざまなメディアで取り上げられる順位予想。Jリーグは20年以上の歴史のあるプロリーグのなかでも、最も正解を導き出すのが難しいリーグだろう。それは裏を返せば絶対的本命が存在しないということを意味する。

欧州の主要リーグでは、各国とも基本的に3種類のすみ分けがなされている。第1グループは優勝を狙うチーム。第2グループは中位をキープし、あわよくば欧州のカップ戦出場を狙うチーム。そして第3グループは2部リーグ陥落だけは避けようというチームだ。

レアル・マドリード、FCバイエルン、マンチェスター・ユナイテッドやユベントス。その他にも数多くあるが、いわゆるビッグクラブといわれる第1グループは、豊富な財力を基盤とし、世界各国や、国内の中位、下位のクラブから優秀な選手を集めることで、常に競争力を保っている。だから強いチームは常に強く、中位や下位のチームはたとえ一時的に躍進したとしても主力選手を引き抜かれることで、最終的には定位置の順位でシーズンを終えることが多い。

一時、国内規模ではあるが、Jリーグでも浦和レッズが、欧州のようなビッグクラブ化の流れになりかけたことがあった。しかし、結局はそれも継続的なものではなかった。欧州と日本のクラブでは財政的なシステムが違うので、まねはできないというのは理解できる。ただ、限りなく勝利を追求し続けると、レアル・マドリードのようなことも起こり得る。

昨シーズンの欧州チャンピオンの立役者であったディマリア。彼を放出して、ハメス・ロドリゲスやクロースを補強する。日本では信じられないことが平気で行われている。レアルの選手補強は、欧州でも特異な例ではあるが、これは長い歴史のなかで常に王者であり続けたクラブのみが築き上げることのできる非情の哲学なのだろう。

過去10シーズン、J1では7チームが年間優勝に輝いている。昨年まで2連覇のサンフレッチェ広島、3年連続でタイトルを獲得した鹿島アントラーズの例はあるが、リーグを圧倒する強さだったかというと、そこまでの印象はない。ライバルチームの自滅により優勝を手にする場面も何度か目にした。その意味で、近年のJ1の優勝チームからは1990年代終盤から2000年代初めにかけての鹿島や磐田のような「強さ」を、ほとんど感じることはない。

確かにリーグ王者は1試合1試合の積み重ねの上に誕生するのだから、カップ戦よりはるかに価値がある。ただ、問題はその勝ち方だ。今シーズンの終盤に入り、浦和の優位は動かないと思っていた。第27節では2位のガンバ大阪に最大7ポイント差のリードをつけた。浦和はGK西川周作を除いて日本代表に選手を送り込んではいない。残されたメンバーもほとんどが代表クラス。月に1週間ほど主力メンバーをアギーレに拘束される他のチームに比べ、チームの調整は容易だと思われていたのだ。ところが直近の5試合を見ると、1勝2分け2敗。優勝争いを演じていた昨年終盤と同じく失速気味だ。

直近を4勝1敗で2位に浮上。浦和を勝ち点3差で追うガンバを除き、上位チームの戦いぶりがふがいない。3位鹿島は1勝2分け2敗。4位川崎フロンターレは1勝1分け3敗。そして5位のサガン鳥栖も2勝3分け。優勝を争うはずの上位5チームのうち4チームが獲得可能な最大15ポイントのうち半分の勝ち点も挙げていない。世間のJ1優勝争いに対する注目度が低いのもうなずける。

勝負どころで勝ち切ることができない。それでも最終的に優勝チームは生まれる。ただそれは国内だけに限れば大きな問題ではないのだろうが、目を海外に向かわせれば大きな危険をはらんでいる。

かつては浦和やガンバが頂点に輝いたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)。アジアではJリーグの実力は一歩抜きんでた時期があった。しかし、近年の日本勢はACLの予選リーグさえ勝ち抜くことができない。他のアジア諸国のレベルが上がったのは確かにある。それと同時にJリーグのレベルが下がっているのも事実だろう。

今年のガンバに限らず、近年のリーグはサンフレッチェ広島、柏レイソルなどの例を見るまでもなくJ2から昇格したチームが、いきなり優勝争いを演じる展開が続いている。どのチームでも優勝を狙うことのできるエキサイティングなリーグ。そういう評価もある一方、絶対的な強さを持つチームがないということは国際舞台では大きなハンディなる。

代表チームとは、どの国を見渡しても国内で圧倒的な強さを誇るチームをベースとして編成される。その負けることに慣れていない、というよりも負けることを拒絶する選手たちを中心に、勝者のメンタリティを持ったチームができあがる。その意味で負けることに慣れている選手が中心となる日本代表がもし作り上げられたなら、それはかなり危険なことだ。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。