南関東(東京、千葉、神奈川、山梨)で開催されている高校スポーツの祭典、全国高校総体で、山梨で実施された陸上、重量挙げ、サッカーなどを取材した。11日には夏の風物詩、全国高校野球選手権大会が甲子園球場で幕を開けた。夏は部活動に取り組む高校生にとって、特別な季節だ。

会場に足を運んだ中で重量挙げはこれまで国体等で何度か取材する機会があったが、一般にはなじみの薄い競技だろう。今回、あらためて気付いたことがある。それは、他競技と比べて高校から始める選手が多いということ。競技最終日に行われた105キロ超級、105キロ級、94キロ級の優勝者はいずれも高校に入ってから重量挙げに取り組んでいる。中でも、105キロ級を制した丸本大翔(岡山・水島工)に驚かされた。2年生ながら重量級らしい筋骨隆々の体つきで、盛り上がった太もも周りは73センチ。それが中学時代にやっていた競技を聞くと「ソフトテニスです」と言う。失礼だったとは思うが、イメージと全く合わず「え、ソフトテニスやってたの?」と聞き返してしまった。

中学3年の時には体重が85キロほどあり、高校でもソフトテニスを続けるか重量挙げを始めるか悩んだそうだ。わずか1年半足らずで高校生の頂点に立ったのだから、転向は正解だったと言えるだろう。同校で指導して13年の河島隆行監督に話を聞くと、岡山ではソフトテニスが盛んで、これまでも軽量級では転向は決して珍しい話ではないらしい。ただ、重量級ではさすがに丸本が初めてと教えてくれた。年明けからめきめき力をつけてきた伸び盛り。同監督は「柔軟性があるし、これだけの体で俊敏性もある。フォームも固まってきた」と成功の理由を説明した。

重量挙げは見かけと違い、力任せに持ち上げればいいという競技ではない。例えばジャークは、床に置いてあるバーベルを引き上げて鎖骨、肩の上に置くのと同時に、一度しゃがみ込んでから立ち上がるクリーンという動作がある。そこから両足を前後に開きながら一気に頭上に挙げて両腕で支え、両足をそろえて静止すれば成功となる。94キロ級で優勝した佐藤啓隆(福島工)はジャークで自己ベストを1キロ更新する154キロを成功させたが、ポイントに挙げたのはクリーンの動きだった。従来はとにかく高く挙げようとしていたが、力頼みではうまくいかず、重さが増すと持ち上げてもすぐに落としてしまうことが多かったという。発想を転換し、肩まで引き上げたバーベルの下に素早く入れるよう、速くしゃがみこむ練習を積んできたのだ。

実際にやってみるとわかるのだが、しゃがみ込む動作のスピードを上げるのは意外に難しい。瞬発力やバランス感覚のある選手が向いており、単純な筋力だけでは記録は伸びていかない。もちろん中学から経験している方が技術面で有利なのだが、体ができてくる高校から始めても一線級で勝負できるのがこの競技の面白さだ。

重量挙げの魅力を質問すると、どの選手も「自己新記録を出した時の楽しさ」をまず挙げる。鍛えれば鍛えただけ、数字となって表れるのが醍醐味。優勝争いとは縁遠い記録であっても、これまでの限界を超える重量を成功させるとガッツポーズを決めて喜ぶ。時には優勝者よりも派手なのでは、というほどのアクションを繰り出す。観戦者、とりわけ記者という立場からすると勝った、負けたというところに視線が向いてしまいがちだが、この喜びこそがスポーツの原点なのではないだろうかとも考えさせられた。

長井 行幸(ながい・みゆき)1984年、千葉生まれ。2007年、共同通信に入社し大阪支社勤務。阪神を経て高校野球、ラグビーを担当。 14年5月東京本社に転勤し引き続きアマ野球、ラグビーを中心に取材。