日本ハムの大谷が極めて異例な投打の「二刀流」の道を歩み始めた時、周囲からはさまざまな声が聞かれた。「あれだけ速い球を投げられる投手はめったにいない。投手に専念すべきだ」とか、「野手としてなら毎日プレーできる」といったように、どちらか一方を求めるものが多かったように感じた。それが2年目の今季は二者択一を迫る意見は減り、少しずつ変わり始めているような気がする。先発投手としてローテーションの一角を担う合間に、体の状態に問題がなければ野手として出場しているが、しばらくはこのままの形を続けるのがいいのではないかと思う。

チームが最下位に終わった昨季終了後から、栗山監督は「基本的に先発投手として中6日で回っていく。(投手で先発後に野手のパターンは)考えにくい。昨年は登板間隔が空いていたからできた。打者として使えるところは限られている」と将来性豊かな若者の成長プランを描いた。昨秋の宮崎での秋季教育リーグから投手を中心とした調整がスタートし、今春のキャンプでもブルペンにいる時間が圧倒的に長かった。投手としての足元を着々と固め、開幕からローテーションを崩すことなく、きっちりと期待に応えている。

野手として先発出場するときは3番か5番を任されることがほとんど。主軸に座るだけの能力が認められている証拠だ。5日の20歳の誕生日には2本のアーチで自らを祝った。実際に現時点の数字で見ても、打席数に対する三振の割合は減り、打率や本塁打は昨季の数字を上回るなど成長の跡がうかがえる。ただ、1試合で投打の両方をこなさなければいけなかった交流戦中の3試合は、すべて「7番・投手」だった。「投手・大谷」と「打者・大谷」を切り離して考えており、指揮官は「投げる時は投げる人にした方がいい。打つことは考えるな。ちゃんと投げて」とあえて打順を下げることでメッセージを送っている。

投手としては、前半戦を終えリーグ2位タイの9勝(1敗)を挙げてチームに大きく貢献。その球速にもスポットライトが当たっている。岩手・花巻東高の3年時に出した球速160キロを、6月だけで5度もマークした。そのうちの4度は塁上に走者がおらず、決して気負うことのない場面だ。これまでは155キロ程度でも球場にはどよめきが起こっていたが、観客の反応も増したように思える。フォームが固まり、投球のタイミングが合いだしたことで、無理にスピードを求めなくても出るようになってきている。日本人最速の由規(ヤクルト)の161キロ、日本球界最速のクルーン(巨人など)の162キロをいつ上回るのか、登板ごとに楽しみな半面、こちらの仕事としては1球も気が抜けない。

このまま順調に成長していけば、近い将来には米大リーグ挑戦の話題で周囲が騒がしくなるのは必至だろう。投手として評価されても、打者として海を渡ることを本人が決めたとしても、指名打者制を採用していないナ・リーグのチームに所属すれば、現在と同じような投打での活躍が見られる。気の早い話だが、楽しみは尽きない。

松下裕一(まつした・ゆういち)2004年入社。05年からプロ野球を取材し、オリックス、阪神、ヤクルト、西武を担当。13年からは日本ハム担当。東京都出身。