昨年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で2020年東京五輪開催が決まってから、早いものでもう10カ月。6年後の祭典に向けた準備は、国を挙げた「オールジャパン態勢」で着々と進み、スポーツ界もメダル獲得に向けた若手選手の育成などに早速着手している。そんな中、自国開催の五輪というかつてない追い風が吹いている今だからこそ、各競技団体が本腰を入れて取り組むべきだと思うことがある。自己財源を増やすことによる、財政基盤の強化だ。

大手広告代理店の関係者は「東京五輪が決まってから、企業のスポーツ界に対する関心はものすごく高くなっているのは事実」と認める。各団体にとっては、スポンサーを獲得し、事業を拡大していく千載一遇のチャンスだ。日本水泳連盟はことしに入って、資生堂、日本製粉と新たに協賛契約を結んだ。企業の支援に対する意欲を「今までにないぐらい感じている」という泉正文専務理事は「東京五輪決定を機に、スポンサーをつなぎ止め、自己財源を確保していくことが重要だ」と強調する。狙いは選手強化の充実だけではない。「競技の普及に関する事業には、なかなか国の補助金は出ない。ちょうど学校体育での水泳の扱いが縮小しており、危機感を持っていたところ。普及にも力を注ぎたい」と言う。

東京五輪に向けた選手強化には国の支援の拡充が見込まれているが、競技団体による自助努力での資金確保も当然不可欠になる。東京五輪で金メダル数世界3位を目標に掲げる日本オリンピック委員会(JOC)は6月、競技団体のアンケート調査を基に20年までの6年間で総額1千億円以上の国費による強化費が必要だとし、文部科学相やスポーツ議員連盟に要望書を提出したが、どこまで反映されるかは不透明だ。議連幹部は「(来春政府が新設する方針の)スポーツ庁ができても、予算はそう簡単に一気には増えない」とみる。

東京五輪までの強化費調達だけでなく、五輪後も見据えて危機感を持って取り組もうとしている団体もある。6月の総会で執行部が退陣に追い込まれ、現在、新体制を整えている日本ホッケー協会は、前の執行部がまったく力を入れてこなかった協賛社集めなどのマーケティングを、強化とともに最重要事業に掲げる。新体制を引っ張る幹部は「本当に大事なのは国の補助金が一気に減る東京五輪後。今のうちに、一過性で終わらずにホッケーを長期的に支援してくれるスポンサーを見つけ、6年間でしっかり関係をつくりたい」と意気込む。この幹部は、選手と企業を結びつけるJOCの就職支援「アスナビ」が成果を出したことを引き合いに出し「あのシステムを競技団体にも広げてほしい。地方の会社も含めてスポーツを支援したいという企業と、競技団体を結びつける仕組みがあれば、うちのように注目度が低く小さな競技団体は本当に助かる」と訴えた。

近年、スポーツ界では補助金、助成金の不正受給などの不祥事が相次いだが、その背景には競技団体のガバナンス(組織統治)の欠如とともに、苦しい台所事情があった。2度目の東京五輪を契機に、多くの団体が企業からしっかりとした支援を得て財政基盤を整え、足腰の強い組織へと生まれ変わることができれば、それこそが日本のスポーツ界にとっての大きな「レガシー(遺産)」になるのではないか。6年後には、世間から「日本のスポーツ界も成熟したな」と認められるようになってほしいと今から願っている。

長谷川大輔 1980年、千葉県生まれ。2003年共同通信社入社。大阪、広島でプロ野球を取材し、09年から東京で水泳、バレーボールなどを担当。その後はJOC、日本体協を中心に20年東京五輪へ向けた動きを総合的にカバーしている。