ワールドカップ(W杯)やオリンピックが目前になると日本の報道は急激に過熱する。その内容は、前回大会より上位進出できると楽観視する展望がお決まりのパターンだ。

本当の実力者が出場していない国際大会でもメダルを取ったら、五輪のメダル候補。そう伝えるテレビ番組を見ながら、「なぜ日本人だけが本番でベストに近いパフォーマンスをして、対戦する相手が並なの」「日本人選手が調子を崩す可能性もあるじゃないか」と疑問に思うことがある。あまり現実的だと視聴率が取れないから、期待をあおるような番組に仕立てるのだろうか。

今回のW杯も、まさにそうだった。選手たちが真顔で「優勝を狙う」と語る映像が数多く放送されたため、サッカーをあまり知らない人の中には優勝争いに絡む実力が日本にあると信じた人も多かったに違いない。

ブラジルW杯に参戦した代表は日本サッカー史上、最も攻撃力に優れていた。しかし、W杯で結果を残せなかった以上、「史上最強」をうたうのは間違いだろう。勝負の世界は勝った者だけが語れるのであり、敗者の言葉に耳を傾ける人は多くはない。

ギリシャ対コートジボワールの結果次第だが、勝てば決勝トーナメント進出の望みがあった1次リーグ最終戦。ザッケローニ監督はボランチに青山敏弘を起用した。持ち味の早い縦パスで前への推進力を生み、ゴールを狙うという意思表示だったのだろう。

前半17分のPKで、コロンビアに先制を許したが、ギリシャとの第2戦ではまったく感じられなかった、ゴールを奪う気迫は見られた。1トップに大久保嘉人を先発起用したことも、その一因だった。

前半ロスタイムには本田圭佑のクロスから岡崎慎司が得意のダイビングヘッド。1―1の同点にした時点で、可能性を感じさせた。ただ、違和感はあった。これまで日本が見せてきた戦い方とは明らかに違ったからだ。特に、最大の武器であるはずの左サイドがまったく機能していないのが気になった。香川真司がしばしば中央に進出することで、長友佑都が孤軍奮闘を強いられていたのだ。

控え選手で先発を組んだコロンビアが後半開始から、本来の司令塔ハメス・ロドリゲスを投入したことで互角だった状況は一変。中盤でボールの収まり所ができたコロンビアは、得点のため前に出るしかない日本の守備ラインの裏を突くカウンターを効果的に仕掛けてきた。そして、そのロドリゲスが全ゴールに絡む活躍で日本は3点を失ってしまった。

強いとは聞いていたが、やはりコロンビアは本当に強かった。一方、同じく前評判が高かったはずの日本は、W杯で勝てるほど強くなかったことを露呈してしまった。

コロンビアのサポーターで埋め尽くされたクイアバのスタジアムは、コロンビア代表がパスをつなぐ度に「オーレ」の大歓声で包まれた。日本の選手たちは、牛を軽くいなす闘牛士をたたえるこの掛け声をどのような気持ちで聞いたのだろう。日本はW杯の舞台で間違いなくコロンビアに“遊ばれた"のだ。

後半残り5分には、戦力というよりもチームのまとめ役を期待されてメンバー入りした43歳の第3GK・モンドラゴンが交代出場し、カメルーンのロジェ・ミラが持っていたW杯出場最年長記録の42歳を更新した。日本がその対戦相手だったということは、今後長く記録に残るだろう。それほどまでに、コロンビアに余裕を与えてしまったのだ。

2006年のドイツW杯でも1分け1敗の状況から第3戦でブラジルに1―4と粉砕された。しかし、今回の敗戦は同じスコアながらそれ以上の実力の差を感じた。その意味で、悔しささえも沸かない敗戦だった。

今回の代表は間違いなく頑張っていた。それは確かだ。ただ、ひた向きさは感じられなかった。なでしこジャパンからは常に伝わってくる、あの感じが。

多くの選手が欧州で活躍するようになり、個々のスタイルが洗練された影響はあるだろう。それにしても、「自分たちの」スタイルへのこだわりを周囲が許容しすぎたのではないか。そして、国を代表している責任感といったものが他チームに比べて感じられなくなってしまった。精神論はあまり好きではないが、魂が伝わってこないチームは結果にかかわらず、人の心を震わすことは難しいのだ。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。