3失点。もしこれをワールドカップの本番でやったら、99パーセント負けるだろう本番前に課題が明らかになったことはよかったのではないだろうか。

ザックジャパン最後の親善試合となったザンビア戦。細かい視点から問題点を挙げれば切りがないだろう。ただいまさらそれを指摘しても、直るものは直るだろうし、改善できない面もあるだろう。

このチームで戦うのは、残り3試合。それにプラスで何試合が加わるか。とにかく選手たちには、結果はどうであれ、「やり切った感」を持って日本に帰ってきてほしい。

守備面での危うさは前回のコスタリカ戦よりもひどかった。ザッケローニ監督も「内容がよくなかった」といっていたが、ちょっと心配な状況だ。ただ引き分けで終わるかと思われた試合を、ロスタイムの劇的なゴールで勝ち試合にしたのは、精神的には非常によかったのではないだろうか。そのゴールを挙げたのが期待された大久保嘉人となると、雰囲気はなおさら盛り上がるだろう。

劇的な試合展開は、なでしこジャパンの専売特許だと思っていたが、男子も同じことをやってのけた。科学的に証明することは困難なのだが、勝負事には「流れ」というものが確実にある。この日の日本の1点目につながったPKのハンド。さらに直接ゴールした、大久保を狙った香川真司のクロス。これらの幸運も流れと考えれば、日本はいい方向に向っているのではないだろうか。

ザンビア戦で先発した11人。GKが西川周作から川島永嗣に代われば、ほぼコートジボワール戦のメンバーなのではないか。ザッケローニ監督が頭を悩ませるのは1トップのポジションだろう。コスタリカ戦でゴールを挙げたとはいえ、柿谷曜一朗はまだ本調子とはいえない。それを考えれば大久保にかかる期待は大きくなる。

得点を取れる選手といのは、迷いがない。マークが厳しいゴール前。時間とスペースがないエリアでストライカーは仕事をしなければならない。少しの迷いでもあればシュートのタイミングがコンマ何秒か遅れる。そして相手のブロックにひっかかる。逆に調子のいい選手というのは自然に体が反応するのでシュートのタイミングが早く、ゴールとして結びつく。現在の大久保の状態は、まさにこれだろう。

ロスタイムの決勝点。ファーストタッチの青山敏弘のロングパスも圧巻だったが、それに反応した大久保の動きも見事だった。勝負を決めたのは背後からの飛び出しだ。DFの視野に入らない後ろから前に出ることで相手の反応は遅れる。大久保はその状況から、芸術的な右足トラップを決めての左足弾丸シュート。結果より内容が求められる調整試合とはいえ、これほど気持ちのいい勝ち方はなかった。

今回のW杯には出場しないが、2012年のアフリカ王者ザンビアとのマッチメークは、結果的によかったのではないだろうか。ドログバやヤヤ・トゥーレのような強烈なスターはいないが、組織的で真面目なチームだった。そのなかで日本の選手たちは、黒人選手特有の間合いや、シュートレンジの広さを身を持って体感した。コートジボワール戦を1週間後に控えた時期の試合は、アフリカを意識するのに非常に役立った。

キャプテンの長谷部誠の状態は気掛かりだが、まだ本調子とはいえないながらも、本田圭佑も2得点。中心選手に目に見える結果がついてくることは、チームの雰囲気も盛り上がってくることだろう。

4年前、W杯に臨む岡田ジャパンは、本大会前の4連敗を喫して南アフリカに入った。対戦相手にイングランド、コートジボワールという格上が含まれていたことを考えれば、単純に比較はできない。ただ、連勝を飾って本大会に臨むということは、決してチームのマイナスにはならないだろう。

そして今回のチームの頼もしさは、さらにこの1週間での上積みが期待できるということだ。ザックジャパンが、史上最強の日本代表であることは疑いないだろうし、世界を驚かす可能性を秘めている。

このチームはアルゼンチンも破ったし、アウェーでフランス、ベルギーにも勝っている。それを考えれば、日本人が考える以上の強豪国なのかもしれない。すべてのカギを握るのはコンディション。ブラジルでは万全の状態で最高のパフォーマンスを発揮し、1試合でも多く戦ってほしい。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている