いくつかの問題点はあったが、結果的に3―1の快勝。ワールドカップ(W杯)本大会直前の時期の強化試合は、結果よりも内容が重視される。それでも自分たちがペースを保っての鮮やかな逆転勝ちは気持ちがいい。チームの雰囲気は確実に前向きなものになるだろう。

現地時間の6月2日に米国タンパで行われたコスタリカ戦。4年前の最終調整とは正反対の日本代表が見られた。岡田ジャパンは南アフリカ大会直前にイングランド、コートジボワールの格上を相手に選び1―2、0―2の連敗を喫した。その経験を踏まえて実力の勝る相手に対する戦い方を切り替えた。結果的に守備的な戦術にしたことが功を奏しベスト16の成績を収めた。

ザックジャパンの場合は、W杯出場国とはいえ力の劣るコスタリカとのマッチメークを組み、自分たちがこれまで積み重ねてきたものをどれだけ発揮できるかの確認を試みた。

相手に合わせた作戦を練った岡田ジャパンと、自分たちのスタイルを貫こうとしたザックジャパン。どちらもチームの仕上げ方としては正しい。両者を比べれば主導権を握っていた方がより高度なわけで、その意味で日本代表は確実に進歩しているといえるだろう。

コスタリカは北中米・カリブ地区で米国に次いで2位で予選を突破した。10試合で7失点と守備が売り物。日本の47位に対し34位とFIFAランキングこそ上位のチームだが、今回の日本代表の調整には手ごろな相手だった。まず相手がW杯出場国であるために、この時期に手を抜くはずはない。真面目なチームを相手に、日本の連係ミスがあったとはいえ、先制点を与えたこともポジティブにとらえればよかったのではないだろうか。

守備的なチームに先制点を与え、より守備的になる相手をどう崩してゴールを奪うか。そんな展開は本大会でも出てくる。W杯で日本と同居するグループCの他チームに比べれば、コスタリカは実力で劣る。それでも5バックのチームを相手に小気味よくパスをつなぎ数多くの決定機を作り出せたのは、日本代表のポテンシャルの高さだろう。それを、これまでレギュラーでなかった選手を多く入れた組み合わせでできたのは、大きな収穫だ。

前日にザッケローニ監督が「1トップ候補」として名を挙げていた大久保嘉人の右サイドでの起用。切れのあるプレーは現在の好調さの証明だった。4年前のW杯では左サイドのレギュラーとしてプレーした。ただ物足りないのは決定力だった。それもJリーグでの結果で解決された。Jリーグ関係者が「静止状態から一歩でトップスピードに乗れる」と評した日本人離れしたギアチェンジの鋭さ。守備でも戦える男の加入は、攻撃のオプションを急激に増やしたといっていい。

さらにこの日、先発した山口螢、青山敏弘の2ボランチも特徴を見せた。鋭いボール奪取からトップスピードでゴール前に進出する山口の機動力と判断力のよさ。精度に優れた青山の高速縦パスは、シンプルであるがゴールに直結する予感を抱かせた。残念なのはこの2人に、実績のある長谷部誠、遠藤保仁を加えた4人のなかから、このポジションで基本的に2人しか使えないとういこと。組み合わせはどうあれ、能力の高い2人がベンチに控えるということは安心の担保ではあるが、もったいない気もする。

香川真司に加え、Jリーグで不振を極めていた柿谷曜一朗にもゴールが生まれた。まだ本調子ではないだろうが、復調のきっかけになるだろう。

問題はキプロス戦に続き、本来の姿が見られなった本田圭佑だ。この日も判断の遅さから、本田らしくないミスも数多く見られた。日本の躍進に彼の活躍は不可欠なだけに、多くの人が気をもんでいるのではないだろうか。

ただ個人的には本田に関してはそんなに心配はしていない。現時点では体の切れに欠ける面はあるが、それは故障から来るものではない。この日の遠藤の同点ゴールを演出したように「見えている場所」は見えている。あとは自身のコンディションと、長谷部ではないが心を整えるだけだろう。ミランの「10番」がいるだけで相手に対する威圧感は違う。その意味で本田は6月14日のコートジボワールとの初戦に間に合えばいい。

守備では決定的なピンチは必ず訪れる。ゴールを奪われるときは奪われる。この日の失点のような場面は、守備の連携の修正で防げるはずだ。そして日本人には、その修正力があると思う。細かいところを細かい約束事で解決する。それができるのは日本人だけなのではないだろうか。スタジアム建設を含めた関連施設の整備のいい加減さや、あまりにもアバウトな運営体制。ブラジルから伝わってくるニュースに接していると、もしかして日本人は世界でも特異な能力を持つ民族なのではないかと思ってしまう。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている