消費税が8パーセントに上がり、ふとしたところで値上がりを実感する。4月1日の朝、いつものようにコンビニで数紙のスポーツ新聞を手にし、レジまで持っていったが用意していた額よりも数十円高かった。「そっか、消費税が上がったからか」と複雑な心境になった。たかが数十円のことだが、増税を実感した。

プロ野球の球団にとっても、今回の増税はマイナスになることは避けられない。巨人の桃井恒和球団社長は「料金に見合った満足できるものをファンに提供しなければいけない」と危機感を口にする。試合内容の充実はもちろん、ファンサービスもより必要になってくる。ここ数年の巨人は、イベントなどに力を入れている。例えば、「橙魂(とうこん)デー」。選手がオレンジ色のユニホームを身につけ、来場者には全員にオレンジ色のユニホームをプレゼントする企画で人気だという。巨人だけではなく、同様の企画は他球団でもよく実施されている。「おまけ」に人は弱いもので、この「橙魂デー」の試合後は東京ドームの最寄りの水道橋駅では、オレンジ色のユニホーム姿で千鳥足で帰っていくファンがやたらと多い。ほかにも「レディースデー」や「生ビール半額ナイター」などもある。

試合の企画以外でファンに最も喜ばれているのは、練習見学ツアー。ベンチ前で、間近で練習する選手を眺められる。ファンサービス担当者は「テレビのニュースなどでは試合のシーンしか見られない。フィールドまで降りて、選手を近くで見られるのをすごく新鮮に感じるようです」と語る。球団ホームページ(HP)を見れば、多種多様なイベントが掲載されている。

その球団HPも、ファン層拡大のためにひと役買っている。2003年からチームカメラマンを務める鈴木一幸さんは「売りは速報の写真」と言う。試合中、リアルタイムで活躍した選手の写真などを何枚も、とにかく多く載せている。練習中の写真も多い。「(練習は)限られた人しか見られない。できるだけオフショットを撮るようにしている」と鈴木さん。素の選手を見て、より身近に感じてもらおうという思いからだ。写真を見たファンから感謝の言葉を伝えられることもあるという。

私は愛媛県出身で身近に球団がなく、数えるほどしか観戦に行ったことがないが、子供のころに見たプロ野球は今ほど華やかなものではなかった。単に、野球を見るためだけに行っていた気がする。野球通の玄人には、それがいいのかもしれないけど。桃井社長はコアなファンを固めるとともに「ライトユーザー(最低限の利用者)とも言うべき層に対し、来場のきっかけをつくってファンの幅を広げる。きっかけ、誘いの要素を出せるかどうかが頭の使いどころ」と言った。野球にそんなに興味がない人にも門戸を広げようと、ファンサービスの充実を図っている。

5月2日、プロ野球のセ・パ両リーグが開幕してからひと回りした1日時点の観客動員数が発表された。昨季と比べ、1試合平均でセが4・8%増の2万8089人、パが1・6%増の2万1123人だった。現状ではファンはスタジアムに足を運んでいる。ただ、まだたった1カ月。消費税増税の影響は、楽観視はできない。あの手この手のファン獲得作戦は、実を結ぶか。

浅山慶彦(あさやま・よしひこ)2004年共同通信入社。相撲、ゴルフなどを経て、プロ野球担当に。阪神3年間、ロッテ2年間のカバーを経て12年から巨人担当。愛媛県出身。