ことしの大学球界には秋のドラフト会議の上位候補に挙がる好選手が多く、「豊作」の年と位置付けられている。春のリーグ戦で有力選手はおおむね順調に滑り出したが、唯一気がかりなのは東都リーグ・中大の左腕、島袋洋奨だ。

今春の開幕戦のマウンドに、エースの姿はなかった。秋田秀幸監督は登板回避の理由を「調子が悪く、ゲームをつくれるか不安だった」と説明した。その不安は翌日の4月8日、現実になる。2回戦に先発したが二回途中で降板。5連続を含む6四死球とまともにストライクが入らず、打者の背中の後ろを通るとんでもない球も。試合後は「情けない」と話すのがやっと。開幕前のオープン戦から不調で、コントロールを意識するあまりか腕を振り切れておらず、迷いをうかがわせた。指揮官は「ブルペンではいい球を投げるが、マウンドでは駄目。本人が一番悩んでいるだろう」と心中を察した。

沖縄・興南高時代は打者に背中を向ける「トルネード投法」で甲子園を沸かせ、春夏連覇を達成。高校での実績や知名度はことしの4年生の中でもナンバーワンと言える。しかし、大学での歩みは順調とはほど遠い。10年近く優勝から遠ざかっているチームにおいて打線の援護に恵まれない試合も多いが、通算成績は11勝18敗(5月6日現在)と黒星が大きく先行している。2年時は過度な連投の影響もあってか左肘を故障。満足に投げることができなかった。3年生だった2013年は大きな故障もなく「肘はもう問題ない」と話していたが、本来の投球を取り戻せずに炎上を繰り返した。秋田監督は「昨年(12年)まではあんな球はなかった」ともらした。

球速が150キロに達するなど、力が付いている部分も確かにある。一方で、制球面以外にも気になる点が昨年から散見される。甲子園では武器としていた、縦に大きく割れる変化球をあまり使わなくなったことだ。本人は「緩いカーブは使っていきたい」と口にし、練習や試合前のブルペンで投げることはあるが、何か意図があるのか、試合になれば投球の軸は直球とツーシーム。打者の目先を変えたり緩急を使ったりすることができず、追い込んでもファウルで粘られ、球数と四球が増える場面が目立つ。投球フォームも高校の時よりは小さくなっており、対戦打者からは「タイミングは(以前ほど)取りにくくなかった」との声も聞こえた。打者からすれば「いやらしさ」を感じなくなっているのではないか。ことしのドラフト候補には安楽智大(愛媛・済美)高橋光成(群馬・前橋育英)といった高校の注目投手もおり、今の低調が続くようなら島袋の存在感は薄れるばかりだ。

最終学年を迎え、大学球界では珍しく投手ながら主将に指名された。周囲からの信頼と期待は変わっていない。「目標は優勝と自分の『借金』をなくすこと」と本人にもこのままでは終われないという意地がある。高校時代からプロの注目を集めながら「自分には足りないところがある」と中大に進んだ島袋。残りは1年を切っている。その「足りない物」を埋めることはできるだろうか。

中嶋巧(なかじま・たくみ)1983年生まれ。仙台市出身。2007年7月共同通信入社。松江支局、大阪支社経済部を経て13年2月から運動部へ。アマチュア野球を中心に取材。