5月12日。サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会の日本代表メンバーが発表される。これまでも選手選考は、悲喜こもごものドラマを生んできた。果たして今回「サプライズ」は―。

「外れるのは市川。カズ、三浦カズ。それから北沢」。日本が初出場した1998年フランス大会。直前にメンバーは25人から22人に絞り込まれた。当時の岡田武史監督は、長く日本のエースとして活躍した三浦知良を外した。

日本代表監督の土壇場の決断には心の揺れも透けて見える。技術的な基準だけでメンバーを選ぶという単純作業ではないからこそ、人々の関心を呼び、時に涙も誘う。2002年日韓大会のトルシエ監督は中村俊輔を外し、チームのまとめ役としてベテランの中山雅史と秋田豊を呼び寄せた。ジーコ監督が率いた06年ドイツ大会は久保竜彦が外れ、巻誠一郎が滑り込んだ。再び岡田監督が指揮した10年南アフリカ大会は、けがでその年の公式戦出場がゼロだったGK川口能活が精神的な柱に指名された。

今回のW杯に向けては、代表メンバー発表前最後となる日本代表候補の合宿が7日から千葉県内で行われた。国際Aマッチのタイミングではないため欧州組は呼べず、国内の常連組の招集も見送った。裏を返せば、今回呼ばれていない国内組の遠藤保仁や今野泰幸(ともにG大阪)、柿谷曜一朗や山口蛍(ともにC大阪)らはW杯メンバー入りが「当確」の位置にいると見ることができる。もちろん、本田圭佑(ACミラン)や香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)ら日本代表の骨格をなす欧州組のメンバーを軸に、23人の大半は固まっている状況といっていい。

参加したのは19歳の南野拓実(C大阪)、昨季J1得点ランキング2位の川又堅碁(新潟)ら初招集が7人。加えて国際Aマッチ出場経験のない選手を含めれば、23人中の11人が「新顔」といえる構成だ。昨年末、63人の日本代表候補がいると公言していたザッケローニ監督は「W杯最終メンバーを選考するにあたりこの中のメンバーが食い込んでくることを期待している」と新戦力の台頭を歓迎する。

過去4大会、国際Aマッチに出場経験のない選手がW杯の日本代表に選ばれたことはない。「何パーセントかの可能性にかけて頑張る」(川又)。この合宿を足がかりに、W杯の切符をつかめば、かつてない「大逆転」のドラマとなる。

個人的には、本田の「代役」が固まっていないことに懸念を感じている。日本代表で左サイドが主戦場の香川は、何度かトップ下でも試されてはいるが好プレーは見せることができていない。今回の合宿には呼ばれていないが、周囲との連係を考えればベテランの中村憲剛(川崎)の存在を忘れてはいけないだろう。前回のW杯を経験しているという点でも貴重なチームの一員になれるはずだ。本田にけがなどの不測の事態が起こった場合の備えをどうするのか。サイドアタッカーやFWの枠を増やすという判断もありうる。指揮官の胸の内は、1カ月後に明らかになる。

土屋 健太郎(つちや・けんたろう)1979年生まれ。千葉県旭市出身。2002年に共同通信入社、12月から福岡でソフトバンクなどを担当。07年1月から東京でサッカー、大相撲、バレー、バスケットボールなどを担当。