2020年の夏季五輪が東京での開催に決まったことで沸きに沸いた2013年から、年が明けて早々の1月3日早朝だった。東京・JR有楽町駅近くの建物で火災が起きた。この影響で東海道新幹線が正午前までの約5時間余りにわたり、ほぼ全線で運転を見合わせた。年始のUターンラッシュとも重なり、各地の新幹線の駅は足止めされた乗客でごった返した。年始の試合を控えたスポーツ選手も同様に巻き込まれた。

テレビで火災が起きているのを見て「大変なことになっているな」と思いながら、アメリカンフットボールの日本選手権「ライスボウル」の取材に東京ドームに向かった。試合自体は社会人代表のオービックが学生代表の関学大に快勝したわけだが、関学大側を取材した先輩記者から「関学大はスタッフや関係者約80人が火事の影響で試合に間に合わなかったみたいだよ」と聞いて驚いた。乗っていた新幹線が名古屋駅でストップし、全員が会場に到着したのは試合の後半部分から。間に合わなかった人の代役は日本協会の許可を得て応援に来ていたOBが担ったという。

鳥内監督や選手はこのことを敗戦の大きな要因とはしなかったようだが、ベストの状態で大一番に臨めなかった関学大にとっては不運としか言いようがない。主力選手らは前日入りをしていたとはいえ、普段通り試合に臨めないことでの動揺や不安は少なからずあっただろう。

取材を終えて帰宅してテレビを見ると、このアクシデントはニュースでも取り上げられ、弊社も含めて各紙も報道した。ネットでは「全員が試合の前日入りをしていないのが悪い。準備の差が出ただけ」など辛辣な意見があった。確かに一理あるのだが、アマチュアスポーツで予算的にも厳しい中での遠征ということもある。むしろ、急な代役を果たしたOBの人達の機転に驚くところだろう。困っている後輩達の姿を見て、何かできることはないかと約30人が集まり、戦力分析などのサポート役を務めたという。

他のスポーツよりひと際、戦術・戦略が重要になるアメリカンフットボールの日本選手権で、急増チームながらの健闘。関学はライスボウルに3年連続でオービックに敗れた。その3度の対戦の中では結果的に一番点差がついた試合となってしまったが、後輩のアクシデントに即座に対応できるOBを育てた甲子園ボウル最多優勝26度の伝統を持つチームの意地を見た。

杉山勝則(すぎやま・かつのり)1984年生まれ。山口県周南市出身。2008年共同通信入社。本社運動部、大阪運動部を経て、広島支局で主にカープを取材、12年末から本社運動部でゴルフ、ラグビーなどを担当。