ボクシングの2013年度表彰選手が発表され、年間最高試合には大みそか、大田区総合体育館で行われた世界ボクシング協会(WBA)スーパーフェザー級タイトルマッチ、内山高志(ワタナベ)―金子大樹(横浜光)12回戦が選ばれた。

円熟の無敗王者、内山に果敢に挑み、判定負けを喫したもののダウンを奪った金子の奮闘に高い評価が与えられた。敗れてもさらなる可能性を感じさせた金子に拍手を送りたい。

戦前の予想は「内山の必勝」が支配していた。2010年1月、TKO勝ちで世界王座を獲得して以来、内山は既に7度の防衛に成功。“KOダイナマイト"と表現される左右強打の破壊力はすさまじく、戦績は20勝(17KO)1分け。8割を越すKO率には驚くだけ。

一方、金子は日本王座を4度守り、6連続KO勝ちと勢いに乗ってはいるが、まだ内山の相手ではないと見られていた。キャリアの差は明らかだった。

開始ゴングからリング上は緊張感に包まれた。金子は強打を警戒して慎重に滑り出し、内山は余裕十分に対応。3回、金子は左を浴び、早くも右目上をカットした。4回、金子は右フックをクリーンヒットしたが、5回以降は再びペースを握られた。ラウンドを重ねるたびに顔面ははれ、ポイント差も開くばかり。逆転は至難に思えた。

しかし、ドラマが生まれる。10回、金子は渾身の右フックを決め、痛烈なダウンを奪ったのだ。場内の興奮度はエスカレートする。立ち上がった内山にとどめは刺せなかったが、金子の意地には恐れ入った。

ところが、内山も並の王者ではない。続く11回、今度は金子がダウン寸前の大ピンチに立たされる。左右フックを顔面に浴び、足元はフラフラ。それでも根性で立ち続けた。迫力満点の攻防にボクシングの醍醐味が詰まっていた。結局、大差の判定で敗れたが、内山以上に金子に賞賛の言葉が相次いだ。

観客席には金子を育てた往年の名サウスポー、故関光徳氏の夫人クニさんの姿があった。手製のプラカードを掲げて声援したクニさんの目には涙が浮かんでいた。

翌1月1日、金子はクニさんの自宅を訪れ、世界初挑戦の結果を報告した。顔は大きくはれ、それは痛々しかった。クニさんが「誰もが素晴らしいファイトだったと感激していましたよ」と伝えると、金子はこう答えたという。「皆さんの言葉はうれしい。でも、目標は達成していない。もう一度、頑張ります」―。好漢の明日に期待したい。(津江章二)