美しいゴールというのは、何度見ても飽きない。ただ、残念なことに日本では、サッカーの特集番組にチャンネルを合わせない限りそのような場面に出会うことはできない。結果的にサッカー番組を見ない人が、日本で生まれている素晴らしいゴールシーンに接することはないのだ。

一方、欧州では何げなくテレビを見ていると、よく過去の名場面が繰り返されている画面を目にする。それも、かなり古い映像からだ。能動的にテレビに集中しなくても、無意識のうちに脳裏に刻まれていく過去の歴史。それは世の中の共通認識となり、同じ得点シーンについて人々が語り合うことができる。このことが広い意味でのサッカー文化につながるとしたら、日本はまだまだ文化的に遅れているといえるのではないだろうか。

今シーズンのJ1のベストゴールは、セレッソ大阪の柿谷曜一朗が受賞した。11月30日の第33節、対鹿島アントラーズ戦。後方から送られたボールを右足で浮かせ、寄せてきたDFの頭上を越してのシュート。ブラジルで言う「シャペウ」(帽子)という技からの、落ち際を右足アウトサイドで合わせたゴールは、見事の一語に尽きた。

Jリーグ公式サイトで動画を見られるので、より多くの人に見てもらいたい。このような素晴らしいゴールが、サッカーにさほど関心のない人々の目につくようになれば、サッカーはもっと関心を呼ぶのではないだろうか。海外のように1日5分でもいいから、ゴール場面だけを放送するスポンサーは出てこないだろうかと思っている。

年末に来て、柿谷の美技にも劣らないゴールシーンに出くわした。天皇杯準々決勝のサンフレッチェ広島対ヴァンフォーレ甲府戦で見せた佐藤寿人の先制点だ。

前半23分、広島の左サイドにいた水本裕貴から送られた斜め方向のパス。甲府のDFラインの背後に走り込んだ佐藤の左足がバウンドしたボールをとらえた。次の瞬間、ボールはマーカーの頭上をふわりと越えて佐藤の前方へ。そのボールを右足ボレーでミートしたフィニッシュに甲府GK岡大生はシュートコースを消すことさえできなかった。

J2時代も含め、リーグ戦で10年連続の2桁得点。佐藤を見ていると、本当に「うまいな」という言葉しか出てこない。この得点の場面でも佐藤は高萩洋次郎が左に流れたスペースをうまく突いている。しかも水本がキックする直前に一歩自陣に戻りオフサイドを避けた。同時にマーカーに邪魔されることなくボールを扱える空間を作り出している。

自らはすでに走り出し、残った左足のアウトサイドで行うシャペウ。DFは当然、走りだす初速で劣るだけでなく、佐藤の背後から浮かされたボールを一瞬見失う。この時点で勝負ありだ。

「シュートに持ち込む引き出しが多い」

佐藤の得点シーンを表現するならば、この言葉が当てはまるだろう。そして、遊び心があふれている。背後から送られてきたボールをヒールまたはアウトサイドでボールを浮かせてDFを抜く。サッカーをやったことのある人なら、誰もがチャレンジしたことがあるだろう。ただ、このようなプレーは学校の部活動などでは、ほぼ認められない。公式戦で失敗したならば、「なに、軽いプレーをしているんだ」と監督に雷を落とされるのが目に見えている。

指導者は「いろいろなアイデアを持て」と選手に言う。だが、現実は選手個人のアイデアに対しては、必ずしも寛容ではない。それが日本サッカーの矛盾したところでもあるのだが。

選手は、選択したプレーが得点につながるかもしれないからチャレンジする。その一つがロングシュートだ。だが以前、このような話を聞いたことがある。「コースが空いていたからロングシュートを打って外したら、監督から次にやったら試合に使わない」と言われたそうだ。その高校年代のチームは、現在の流行となっているポゼッション・サッカーを志向しているという。監督にとっては、ゴールよりもボールを保持する方が大切なのかもしれない。

甲府戦の佐藤のゴール、鹿島戦の柿谷の得点にしても、遊び心がなければ決して生まれない。逆に守る側からすれば、予想外のことをやってくる選手の方が、より対処しにくいのだ。

マラドーナやロナウジーニョ、ネイマール。彼らのプレーが、なぜ人をひきつけるのか。それは遊び心があるからだ。その意味で生真面目な日本人も、ことサッカーに関しては見習ってもいいのではないだろうか。規格からちょっと外れたところから生まれる予想外のゴール。「いまなにが起こった」と思わせるプレーが人の目に触れる機会が多くなれば、日本のサッカーももっと盛り上がると思うのだが。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている