今週末のサッカー界は、大きなイベントがめじろ押しだ。6日には来年、ブラジルで開催されるワールドカップ(W杯)のグループリーグ組み合わせ抽選会が行われ、7日にはJ1の優勝チームが決定。翌8日のJ1昇格プレーオフの決勝戦で、3番目のJ2からの昇格チームが確定する。

中でもサッカーファンならずとも関心の高いのが、W杯本大会で、日本がどのグループに組み込まれるかだろう。これまでの大会と違い、10月時点でのFIFAランキングがシード権に反映される今大会。過去の組分けと大きく異なる可能性が出てきた。

開催国のブラジルを除く31カ国が厳しい地域予選を勝ち抜いてきたのだから、楽な試合というのはない。そうは言っても、今大会は「比較的楽な組」と「とてつもなく難しい組」が極端に分かれる可能性がある。特に前回大会までは8グループのうち、せいぜい一つだった「死の組」が複数出てくるかもしれない。

19分の8の重み。それが他の大会にはないW杯だけが持つ価値だと思う。何のことかと思われるだろうが、前回大会までにW杯は19回行われ、優勝国はわずかに8カ国しか出ていないという事実だ。しかも自国開催の大会で優勝を飾った国が、8カ国中6カ国。ウルグアイ、イタリア、イングランド、旧西ドイツ、アルゼンチン、フランスがこれに当たるが、初優勝を自国で果たしたのは西ドイツ以外の5カ国にのぼる。この数字を見るまでもなく、ことW杯に限っては地の利と、その国が持つサッカー文化の総合力を試される大会なのだ。

先月の日本代表の欧州遠征で、ベルギーを「優勝候補」としてあおる報道が国内に目立ったが、個人的にはかなりの違和感を持った。まず、FIFAランキングというのが、実力を正確に反映しているのだろうか。そうは思わない。W杯組分けのシード権を決める基準となった10月のランキング。ベルギーは2カ月前の8月の10位から5位まで躍進した。W杯予選の大切な試合に勝利してポイントを積み重ねた結果だ。

一方でブラジルの10月のランキングは11位だった。ブラジルは開催国のために第1シードになるから問題ないのだろう。だが、試合の重要度でポイントが違ういまのシステムでは、W杯予選を戦わない開催国のランクは本来の実力以上に低くなる可能性がある。そして、それは今後も続くだろう。

「優勝したことのある国しか、W杯で優勝する方法を知らない」

かつてのドイツ代表選手が言っていた言葉だが、考えようによってはもっともである。Jリーグに当てはまる。初優勝するまでが一番難しいが、一度優勝を果たしたチームは、その後、簡単にタイトルを獲得してしまう。

ブラジル大会の優勝候補を聞かれれば、間違いなく優勝体験を持つ国が中心になってくるだろう。優勝経験国が、8カ国ずつ組み込まれた四つのポットのうち、FIFAランキング上位の第1ポットに5カ国、第4ポットに3カ国が振り分けられた。第4ポットの9カ国中1カ国が抽選で、アフリカ勢中心の第2ポットに回るようだが、組み合わせによっては恐ろしいグループができそうだ。

グループ分けは以下の通り。

第1ポット ★ブラジル、★アルゼンチン、コロンビア、★ウルグアイ、ベルギー、★ドイツ、★スペイン、スイス

第2ポット アルジェリア、カメルーン、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、チリ、エクアドル、(抽選で第4ポットから1カ国が加わる)

第3ポット オーストラリア、イラン、日本、韓国、コスタリカ、ホンジュラス、メキシコ、米国

第4ポット ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、★イングランド、★フランス、ギリシャ、★イタリア、オランダ、ポルトガル、ロシア

(★はW杯優勝経験国)

アジアと北中米・カリブが組み込まれた、第3ポットの日本にとっての理想的な組み合わせは、第1ポットのコロンビア、ベルギー、スイスを引き当てることだろう。この3カ国に関してはランク上位とはいえ、本大会では前回大会のデンマーク程度の実力ではないだろうか。

第2ポットからアルジェリア、エクアドル、第4ポットからはボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、ギリシャ、ロシアが入れば最高の幸運と言えるだろう。また優勝経験国でもイングランド、フランスが組み込まれれば、第1ポットの相手によっては南アフリカ大会の感じで決勝トーナメント進出を狙える可能性は十分にある。

ただ、最悪も考えなければいけない。第1ポットで前記の3カ国以外と当たり、第4ポットでイタリア、オランダ、さらに第4ポットから抽選で第2ポットに強豪国が振り分けられ、フランスやポルトガルが入ってきたら、考えるだけで恐ろしい。逆に他の国からすれば、第2ポットから日本かメキシコが入った組の相手も相当嫌だろう。

でも見たいような気もする。これまでにない強烈な「死のグループ」。ブラジルやドイツのシード組に、オランダ、メキシコ、イタリアなんていうグループも可能性としてはまったくないとはいえない。そうなればグループリーグから白熱の真剣勝負が堪能できる。その反動で、大いに手を抜けるグループも誕生するのだが。

W杯の組み合わせは宝くじと同じだ。発表まで、人々がいろいろな思いを抱いて楽しめる。そして週明けの日本では、家庭でも酒場でもサッカー談議に花が咲くだろう。当然、Jリーグの話題も入っていると思うが、日本代表には、とてつもなくクジ運に恵まれた人がいることを多くの人が願っているだろう。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている