ちょっと盛り上がりに欠ける優勝争い。今シーズンのJ1リーグの終盤を見ていると、そういう印象を受ける。

これは見る側の勝手な願望なのかもしれないが、「タイトル争いの終盤はデッドヒートで」というのが理想だろう。しかし、11月23日の第32節では首位を走る横浜F・マリノスを勝ち点3以内で追っていた浦和レッズ、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズの上位陣がそろって敗戦。2試合を残した時点での首位横浜FMと2位浦和の勝ち点差が4に広がった。次節にも横浜FMの4度目の優勝が決定する可能性が出てきた。

終盤に入り大混戦と思われていたリーグが、一転して気の抜けた感じになってしまった。数字としては優勝の可能性を残す、5位セレッソ大阪との直接対決となった広島。その敗戦は、ある程度仕方がない。残念だったのはホームで戦った浦和と鹿島が共に敗れたことだ。

なかでも川崎フロンターレと対戦し、現在絶好調の大久保嘉人1人にやられた感のある浦和はショックが大きかったことだろう。

超攻撃的なサッカーを信奉するペトロビッチ監督の下、常にスリリングな試合を展開する浦和のサッカーは、確かに見ていて楽しい。ただ見方によっては「軽いな」と思えるのも事実だ。それがナビスコカップ決勝も含め、大一番での勝負弱さにつながっていることを、熱狂的な浦和のサポーターもうすうす気づいているのではないだろうか。

いまの浦和を見ていると、2006年、08年、09年とJ1で2位になった川崎がダブって見える。迫力の攻撃力を持ち、強いこと疑いないのだが、タイトルを取るチームとしては何かが欠ける。当時の川崎は1点を争う試合での詰めが甘く、最終的に勝ち点1に泣かせられるチーム。その最大の弱点は守備だった。同じことは、いまの浦和にも言えるだろう。

ザッケローニ監督が就任した直後、得点記録を見て「この選手は本当にセンターバックなのか」と尋ねたという槙野智章。彼の攻撃力は並のアタッカーを超えるだろう。この槙野に加え、森脇良太もFW並に攻め上がる浦和の3バック。だがこれは奇をてらい過ぎているのではないだろうか。

今シーズン、ここまで浦和の3バックは17点も取っているという。常識では考えられない数字だ。ただ失点も多い。他の上位チームのほとんどが失点を30点未満で抑えているのに、浦和は32試合で47点もの失点を喫している。

もし自分がGKだったらと想像すればいい。攻め上がって点を取ってくれるセンターバックがいいのか、きっちりと守備をしてくれるセンターバックがいいのか。大半の人は後者を望むだろう。

17ゴールを挙げる3バックより、失点を17点減らしてくれる3バックの方が確実に計算できる。それはこの日、「失点が多すぎる。47点も取られれば優勝争いは難しい」と答えた興梠慎三の言葉とも重なるのではないか。特に興梠は手堅さでタイトルを取り続けてきた鹿島の出身。ある意味で1点差勝負をものにするには、何が一番大事かを分かっている選手だ。

一方で今シーズンの横浜FMは、タイトルを取るための王道を突き進んでいるように感じる。日本リーグ時代に前身の日産自動車は、ベテランが多いことで「オッサン自動車」と呼ばれたことがあった。そのチーム以上の平均年齢で戦うチームの活躍は、大きな驚きだった。

リーグ最少失点となる28失点の堅い守備を基盤に、数少ないチャンスを確実にものにしてくる。その勝負強さは数字にも表れ、ここまで18勝のうち1点差での勝利は12試合。ゲームの流れを読むことのできるベテランが多いということもあるが、苦しい時間帯をしのぎゲームをコントロールしていることの証だろう。

その横浜FMには運もある。大黒柱の中村俊輔が胆のう炎で入院したにもかかわらず、日本代表の遠征があったことでリーグの欠場が1試合で済んだことだ。中村が欠場した第31節の名古屋戦こそ敗戦を喫したが、同じ節の試合で、2位浦和、3位広島も勝ち点1を加えたものの、勝ち切れなかった。流れは間違いなく横浜FMにあるといっていい。

ただ、次節で横浜FMがすんなりと9シーズンぶりの優勝を飾るかといえば、それほど簡単なことではないだろう。相手は川又堅碁という乗りに乗ったストライカーを擁する好調のアルビレックス新潟。場合によっては優勝争いが最終節にもつれ込むことも十分にあり得る。

それでも今シーズンの横浜FMには、個人的にご褒美をあげたい気持ちだ。中村俊輔、中澤佑二、ともに35歳。マルキーニョス、37歳。そして極め付きはドゥトラの40歳。いくら選手寿命が延びたとはいえ、主力選手がこんな高齢(トップアスリートの中でという意味で)なチームがタイトルを獲得した例は、過去にもないだろう。

「サッカーという競技は、こうやって勝つんだよ」

円熟の域に達したオジサンたちの、自慢げな声が聞いてみたい気がする。おそらくその言葉には、何者をも納得させる説得力があるはずだ。

盛り上がりと言う観点から見れば、Jリーグ側は、優勝争いが最終節までもつれることを望んでいるのだろうが。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている