現時点では、来年3月5日の試合まで日本代表の活動は予定されていない。それを考えると、今年最後の試合となった欧州遠征は、理想的な締めくくりになったのではないだろうか。

FIFA(国際サッカー連盟)ランキング8位のオランダに2―2で引き分け、5位のベルギーに3―2の勝利。格上の国を相手にした今遠征の最大の収穫は、結果や内容もさることながら、周囲の雑音をシャットアウトしたことだろう。

わずか1カ月前の東欧遠征では、ワールドカップ(W杯)出場を逃したセルビア、ベラルーシを相手にして1点も奪えずに喫した連敗。世の中の論調は、急激にザッケローニの日本代表に懐疑的な方向に傾いていった。

しかし、今回の好結果で周囲の批判の声はやむだろう。それはひいてはチーム作りに関してザッケローニ監督が、自分のやりやすい環境を確保したということになる。

それにしても、良い意味でも悪い意味でもよく分からないチームだ。今回の2試合も含め、アウェーでW杯優勝経験のあるフランスを破るパフォーマンスを見せたかと思うと、実力的に日本と同等、それ以下のチームに完敗を喫する。良い意味として解釈すればW杯本大会で、格上を破る可能性も秘めているということだ。逆に見せ場を作れずにあえなく敗退することもあり得るのだが…。

「チームは停滞する時期もあるが、逆に大きく進歩する時期もある」

かつて日本代表を率いたオシム監督は、こう話していた。それにしても1カ月でチームは、ここまでの変化を見せられるのかというのが正直な感想だ。

臆測だが、結果的に格上と対戦したことが良い方向に働いたのではないか。1カ月前の試合と違い、今回はもし敗れたとしても実力を考えれば、前回ほどの大きな批判を浴びることはないからだ。

当然、そこには日本代表としての選手たちの「これ以上、ぶざまな姿はさらせない」というプライドもあったのだろう。

今回の遠征の合宿で、チームの技術や選出が飛躍的に向上したとは思えない。考えられるのは気持ちの変化だ。

ベルギー戦後、キャプテンの長谷部誠は「チームとして競争が激しくなってきたことはうれしいことです。チームが成長していく上では(競争は)不可欠」との発言をしていた。スターティングメンバーの入れ替えが、マンネリ化していたチームに予想以上の刺激となったのか。これまでレギュラーと思われていた選手は危機感を持ち、出場機会を諦めていた選手は自分にも活躍の場はあると考えたのだろう。

10月の東欧遠征2試合で不動だったスタメン。オランダ戦では、ベラルーシ戦から4人が代わり、ベルギー戦ではそのオランダ戦から6人が代わった。そして、出場した選手たちのほとんどが高パフォーマンスを見せた。なかでも1トップは出色のできだった。オランダ戦で大迫勇也が1得点1アシストの活躍を見せれば、ベルギー戦で代わって先発した柿谷曜一朗も同じく1得点1アシスト。交代出場したオランダ戦で、決定機を外した柿谷にしてみれば、大迫の活躍が大きな刺激になったことは想像に難くない。

2戦を通して日本がたたき出した5ゴールは、どれもが美しいものだった。連動した動きからの、ダイナミックな展開で生み出された得点。日本選手の特徴である機敏さとテクニックの高さは、少なくとも大柄で前に出る力には強いが、横の動きに多少の緩慢さがある欧州の大型ディフェンダーを相手に十分に通用することを証明した。

一方で、またも簡単に4点を失った守備はほめられたものではない。ただオランダ戦のロッベンに許した2点目以外は、改善の余地はある。両試合で先制点を献上したプレーは日本の明らかなミス。これは簡単に修正できる。またベルギーのアンデルベイレルトに許した2点目のヘディングシュートに関しては、高さ勝負になるために可能性をゼロにすることは難しい。ただ、マークの仕方によっては、失点の可能性を低くすることはできる。

2点をリードしたベルギー戦で1点差に詰め寄られたとき、あのイタリア戦の悪夢がよみがえった。本田圭佑が「3点目を許さなかったのがよかった」といったのは、日本の進歩だろう。そして、2点のリードを2点差のままで締めくくることができれば、このチームにはW杯でも大きな期待が持てる。

ただひとつ引っ掛かるのは、ベルギーのFIFAランキング5位という順位だ。現在のランキング算出法で正しい順位であることは疑いないが、ベルギーがW杯の優勝候補かといわれれば決してそうではないと思う。少なくともW杯本大会になれば、それよりもランクの低いイタリア(8位)やブラジル(11位)のほうが間違いなく優勝候補だ。それを考えれば、ベルギーはBランクの国と考えた方がいいと思う。

なぜならば現行のランキング算出法で、日本は2011年4月にFIFAランク13位まで上がったことがある。わずか2年半前、日本はそこまで強かったのか。それを思うと、5位のチームを下したからといって、われわれは浮かれてはならない。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている