レッドブルとセバスチャン・フェテルの4連覇が決まったF1シーズン。早くも欧州各メディアは来季に向けた人事など「ストーブリーグ」に関する報道へとシフトしている。

だが、こうした特殊な産業にとって大切なのは、一見「無関係では?」と思えることにも活動の範囲を広げることで、次世代の人材育成へとつなげていくことだ。次世代のファン、そしてエンジニアなどを含めた周辺スタッフを育成できなければ、モータースポーツ全体が衰退してしまう。

例えば、F1は世界各国の学生向けに、模型を圧縮空気で走らせる競技を通じてエンジニアリングを勉強する機会を提供していたり、レッドブルはプロアマ問わず世界中の写真活動家に向けた大会を開催して、結果的に自分たちの活動への注目度を高めたり、人材育成にも役立てている。こうしたさまざまな活動のなかでも、その幅広さで有名なのが、実はピレリだ。

彼らが今回発表したのは、アメリカの名門プリンストン大学との2014年から5年間に及ぶ提携。中身はプリンストン大学の学生に向けて、イタリアの学者や専門家を客員教授に招聘して、イタリア文化と歴史の研究をサポートするというもの。

授業も一般的なものではなく、第2次世界大戦後のイタリアの歴史と文化、ライフスタイルの流れを描写しているイタリア映画の分析から学ぶという。また、学ぶための素材はピレリ財団が全面協力して提供するとのこと。

一見すると、企業活動とは関連性が感じられないが、担当者に聞けば「その時代のトレンドやメディアの革命といったものを、より多くの人の目に触れてもらうことは、結果的にビジネスにも好影響を与えるものだと考えています」とのこと。つまり、長期的視点に立った活動ということだ。

現在、ヨーロッパでは多くの企業が不景気に苦しんでいるが、こうした次世代向けの活動にしっかり予算を計上するのは、いかに教育を重視しているかの現れだろう。モータースポーツ活動支援なども、予算を縮小したり、サポート態勢を変更することはあっても、継続することを重要視している。

日本経済を牽引する役割を担う自動車メーカーたちも、本来は継続や教育を重要視する企業文化を持つはず。ぜひともそうした動きを、世界最高峰の舞台でも見せてもらいたいものだ。(モータージャーナリスト・田口浩次)