財政力と愛国心を武器に、ロシアがスポーツ界で存在感を示している。7月にモスクワの東800キロにある学生の街、カザニで行われたユニバーシアード夏季大会で、そう実感した。大学生の五輪と呼ばれる総合大会ではあるものの、開会式に出席したプーチン大統領は「五輪のスケールでこの大会の準備をしてきた」と明言した。

日本は3年後のリオデジャネイロ五輪を見据えた布陣で臨んだ。陸上は高校生の桐生祥秀(京都・桐生)とともに100メートルで日本人初の9秒台突入が期待される山県亮太(慶大)や、ロンドン五輪代表の飯塚翔太(中大)ら世界選手権代表組が参戦した。山県は100メートルで銀メダル、飯塚は200メートルで銅メダルだった。卓球は団体の女子が優勝し、柔道やレスリングなどでも活躍が光った。

地元開催で選手強化に力を入れるのは当然にしても、今大会のロシアは圧倒的だった。メダル獲得数は「金」155を含む292になり、総数84(金は24個)で2位の日本を大きく引き離した。予選や1回戦からでも、ロシアの選手が出場する試合会場は常に大勢の観客が詰めかけ、「ロシアコール」と対戦相手に対するすさまじいブーイングが響き渡った。

この力の入れようを納得させる要素は、近い将来にある。2014年にはロシアで初めての冬季五輪、ソチ大会を開き、18年にはサッカーのワールドカップ(W杯)を控える。世界的に注目を浴び、運営能力を問われる大規模なスポーツイベントが待ち受けているのだ。

今回のユニバ取材で、個人的には二つのポイントが印象に残った。一つ目は大失敗の輸送問題を挙げたい。メディア用のバスが定期的に運行する予定だったものの、完全には機能しなかった。共同通信のペン取材者は1人だけのため、試合会場を転々としなければならなかった。しかしバスを待っても来ず、タクシーを呼んでも来ず、といった状況に何度も陥った。レンタカーがあればどんなに楽か、と思う一方で見知らぬ土地で車の通りが多い中、右車線を運転する勇気はなかったのだが…。

二つ目は、親切なボランティア。厳しい選考を経た人々の献身ぶりと優しさに何度も救われた。イスラムとヨーロッパの宗教や文化が混在する街の紹介を熱く語り、来る気配のないタクシーを辛抱強く一緒に待ってくれた。「こんなに来ないタクシーなんて今まで見たことがない。普段は高いから乗ることは少ないんだけどね」と言いながら。保守的とも、内向的ともいえるロシア人の人柄を垣間見ることができた。

国土面積は世界一で日本の約45倍もあるロシア。大胆に突き進む近くて遠いこの国で、まさに世界規模のイベントは、どんな魅力、異彩を放つのだろうか。

米澤万尋(よねざわ・まひろ)2008年共同通信入社。大阪、福岡支社を経て、13年から本社運動部勤務。主にアマチュア競技を担当。仙台市出身。