今季2回目のイタリア開催となったサンマリノGPは、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)が持ち前の高い安定感を発揮して5勝目を達成した。金曜の練習走行から土曜の予選までは、チャンピオン争いをリードするマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)がリードした。全セッションでトップタイムを記録したマルケスは、土曜午後の予選でもサーキット最速記録を更新する走りでポールポジションを獲得。その段階では、日曜午後の決勝でも優位が動かないようにみえた。

しかし、28周で争われたレースでは、ロレンソがスタート直後の1コーナーにトップを切って飛び込んで序盤5周で約3秒のリードを築き、最後までそのアドバンテージを保って優勝のチェッカーフラッグを受けた。「この週末は特にブレーキングに大きな課題を抱えて苦戦していたが、日曜午前のウォームアップで大きく改善できた。おかげで、以前と同じような戦略で決勝レースに臨める自信がついた」

久々に得意の勝ちパターンで勝利を収めた舞台裏をそんなふうに明かした。自身は今回の5勝目で25点を加算した一方、年間ポイントランキングをリードするマルケスは2位で終えて20点を獲得したため、両者の得点差は5ポイント縮まり、終盤戦5戦を残して34点差になった。

ロレンソとマルケスは、ともに今季5勝。しかし、鎖骨骨折などの負傷により数戦で充分なポイントを獲得できなかったロレンソと、転倒ノーポイントは1回きりで、それを除く12戦全てで表彰台に上がってきたマルケスの差が、現在の34点という開きになっている。最近のロレンソは、「チャンピオンはかなり遠ざかった。計算上は可能かもしれないけれど、実際にはほぼ決定したも同然」と、やや弱気な発言が目立っていた。しかし、今季ずっと課題としていたブレーキングに光明が見えたことなどから、今回のレース後には「チャンピオンをとるためには勝ち続けること、それしかない。マルクはとても強いけれど、自分たちも全力で戦っていく」と自信と希望を取り戻しつつある様子も見せた。

ロレンソが残り全レースで優勝し、マルケスが2位以下ならば両者の差は最低でも5点ずつ縮まってゆく計算だ。逆に、マルケスのほうがロレンソよりも上位なら二人の差は大きく広がっていくことになる。この両選手の争いには、今回のレースで3位に入り、ロレンソと同じ総獲得点数で並ぶダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)が絡んでくることも必至だ。2013年総合優勝の行方は、ロレンソがあきらめかけていたほど、簡単に決まるわけではなさそうだ。(モータージャーナリスト・西村章)