英国のシルバーストーンサーキットで行われたモトGP第12戦で、モト2クラスに参戦するイデミツ・ホンダ・チーム・アジアが次戦以降のライダーの交代を発表した。最高峰クラス年間総合2位という日本人最上位記録を持つ岡田忠之をチーム監督として昨年暮れに結成された同チームは、アジア全域の選手層底上げを目指し、今季から活動を開始した。初年度のライダーには、世界選手権で豊富な経験のある高橋裕紀を起用。シーズン半ば以降の成績向上を目標に掲げたが、夏を迎えても実績の残せないレースが続いた。

高橋は2005年に250CCクラスへフル参戦を開始して以来、3勝を含む11表彰台を獲得した実績を持つ。中排気量クラスは10年に2ストロークエンジンの250CCから4ストローク600CCのモト2へと車両規格が変更されたが、その初年度から一貫して継続参戦している。

ことしはマシンの調整や高橋のライディングスタイルとの擦り合わせなどがうまく噛み合わず、シーズンの折り返しを過ぎても改善の兆しは見られなかった。最高位は第4戦フランスGPと前戦チェコGPでの18位。チャンピオンシップポイントは15位に入賞した選手まで与えられるシステムのため、ここまで1ポイントも獲得できなかった。7月末の鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦した際、排気量の大きなオートバイで好成績を残し、選手としての能力が衰えていないことを証明した。しかし、肝心のモト2クラスで低迷が続いたため、チームとしても苦渋の決断に至った。

チームがライダーの交代を発表したのは、日曜の決勝レースが行われた1時間ほど後のことだった。この数日前に今回の決定を聞かされたという高橋は「結果が全ての世界なので、うすうす覚悟はしていた。成績を残すことができなかったのは残念だし、悔しい。しかし、自分としてはできる限りのことをやり尽くしたので悔いはない」と、いつもと同様に明快な口調で話し、穏やかな笑みを見せた。

チームの岡田監督は「シーズン中にこのような決断を下さなければならないのは、非常につらい。ストレスの残るレースばかりさせてしまった裕紀には、本当に申し訳ないことをした」と語った。チームは次戦のサンマリノGPから、マレーシア人選手のアズラン・シャー・カマルザマンを起用する。カマルザマンは、現在、アジア選手権で年間総合首位につけている。くしくも、7月の鈴鹿8耐で高橋がペアを組んだライダーだ。(モータージャーナリスト・西村章)