ラグビーの日本代表が現在北半球で最強と言われるウェールズ代表に勝利した。もう2カ月前のことになるが、欧州6カ国対抗出場チームに勝ったのは1989年のスコットランド戦以来24年ぶり2度目だった。6月15日にほぼ満員の秩父宮ラグビー場で挙げた歴史的勝利は、2015年ワールドカップ(W杯)イングランド大会だけでなく、19年ワールドカップ(W杯)日本大会に向けても明るい話題となった。ただ、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は大きな成果を得るとともに、将来の日本に不安も募らせている。

1番の成果はジョーンズHCが「気持ち、闘争心。80分間やり続けることができた」と言うように、勝ちきれたという点だろう。

日本はパシフィック・ネーションズカップで初戦のトンガ戦に続き、6月1日のフィジーにも敗れた。ウェールズとの初戦はその1週間後。日本人で初めて世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」入りしたSH田中史朗らが合流したのは大きいが、短期間で突然地力が一気にアップしたとは考えにくい。田中が「そんなに強いと感じなかった」と指摘したように、今回のウェールズはまさに2軍メンバーだったというのが正直な感想だろう。

とすれば勝っても不思議はないが、それができなかったのがこれまでの日本。11年W杯のカナダ戦で終盤に追い付かれ、20年ぶりのW杯勝利を逃したのが典型例だ。ジョーンズHCの口癖は「負け癖を変えないといけない」だった。

第1戦で惜敗し、ファンの期待感が高まって迎えた7日後の第2戦。「関心が高まれば、その分結果を残すことが求められる」という元日本代表、大畑大介さんの言葉を借りれば、負けると大きな失望を生む大一番であった。その試合を制したことが日本にとって大きな自信になったのは、その後のパシフィック杯で2連勝したことに表れた。

一方で、指揮官の日本の将来に対する不安や不満は変わらない。第1戦を接戦で落とした後の記者会見でジョーンズHCは「ちょっと一瞬、考えて下さい。大学生の選手がしっかりしたトレーニングを毎日3時間したら、どれだけの選手を輩出できるか」と報道陣に問い掛けた。本物の「勝ち癖」をつけるには、若手強化を変えないといけないと説いた格好である。

大学任せの若手強化を変えるため、日本協会は昨年4月に代表予備軍の「ジュニア・ジャパン」を創設し、2週間に1度のペースで日本代表との一貫したトレーニングを始めた。しかし、大学側との考えの溝は埋まらず、徐々に集まる人数が少なくなり、コーチの方が選手より多いという状況にも陥った。日本協会は運営体系の見直しを模索している。ラグビー界の変革は想像以上に難しい。

世界的名将が強化面で評価する大学がある。全国大学選手権で4連覇した帝京大だ。競技の特性にあった筋力アップと傷害予防を含めた体づくりを重視することが理由で、ほかの大学も参考にしてほしいという願いを込めてか、ことあるごとに褒める。これまで新興校ながら力をつけた帝京大への風当たりは強かったが、史上初の4連覇を成し遂げたことで今季は他校も見習おうという雰囲気が強くなった。ある伝統校の監督が「体づくりを見直さなければ、ラグビーの部分で帝京大と勝負の場に立てない」と決意を新たにする。

間もなく大学のシーズンがスタートする。ウェールズに勝った歴史的なシーズンに、ジョーンズHCをうならせるラグビーを見せて欲しい。

渡辺匡(わたなべ・ただし)2002年共同通信入社。和歌山支局、大阪社会部などを経て11年から運動部。ラグビー、テニスなど担当。東京都出身。