ストライカーも含めたアタッカーが、最もゴールを挙げられるシュート・ポジションはどこか?

よく指導者は、「相手のディフェンダー(DF)のマークから離れて、フリーの状態でシュートを放て」とアドバイスする。しかし、突き詰めると必ずしもそれがすべて正しいとは言い切れない。なぜならば、最もゴールマウスが広大に口を開けているポジションというのは、基本的にDFやGKがシュート角度を狭めるためにコースを切っている場所なのだ。

飛行機の座席に例えればそこは、ファーストクラス。フリーのエリアは良くても、ビジネスクラス。悪ければ身動きのとれないエコノミーだ。シュートする側としては、DFが立っているファーストクラスに潜り込めれば、ゴールする確率はより高くなるのだ。

だが、守備側もそう易々と座席を空けてはくれない。そこで守備側のポジショニングを逆手に取るという発想が生まれる。

ここ数年、欧州のトップリーグの試合を見ていると気づくことだが、ゴールを量産している選手というのはDFを抜き切らなくてもシュートを打つ場面が多い。見事にネットを揺らすボールの軌跡を見て、最初は「偶然かな」と思っていたのだが、その数の多さに意図されたプレーだということが分かる。

彼らの狙っている場所。答えはDFの両足の間に生まれるわずかなスペースだ。そして、そこにうまくボールを通しさえすれば、DFをフェイントで外して横にボールを持ち出してシュートを打つより、はるかにシュートコースは広がることになる。

相手がゲンコツで殴りかかってきたら、人は反射的にそれを避けようとする。DFも同じだ。ストライカーがシュート・モーションに入ったら、DFは反射的にタックルをしようとする。タックルの動作で生まれるDFの両足間のスペースは、十分にボール1個分以上の隙間がある。点を取れる選手というのは、正対したDFの体の正面に低い弾道のシュートを打ち、ここを通してゴールを奪っているケースが多い。

「GKはDFが切っているコースは基本的にボールが飛んでこないことを前提としたポジショニングを取っているので、股の間から出てくるシュートに対してはノーチャンス(手も足も出ない)」

そう語っていたのは、元日本代表のGK松永成立さんだ。言い換えればDFのタックルのタイミングを見極めて、股間を通すシュートを会得した選手ならば、ゴールを量産することは想像に難くない。

残念ながらこのようなシュートを、意図的に狙っている日本人選手は、そう多くはない。そのなかで8月11日のブンデスリーガ開幕戦で古巣シュツットガルトを相手にゴールを決めたマインツの岡崎慎司のシュートは、まさにこのゴールだった。

日本人選手ではないが、最近で言えばこれらのゴールが当てはまる。8月24日のJ1第22節、鹿島アントラーズ対横浜F・マリノスのマルキーニョスがGK曽ケ端準の真正面に放ったシュートがそうだ。さらに同日のブンデスリーガ第3節、対ニュルンベルク戦で生まれた2点目。バイエルンのアリエン・ロッベンがGKシューファーとの1対1の場面で放った右足シュートは、相手がサッカー本能的に両足を広げることを計算した上での、いわゆる「うまい」シュートだった。

相手DFの反応を利用したプレー。それはなにもシュート場面に限ったことではない。サイドの選手のクロスにも同じことが言える。日本のサイドアタッカーの選手は、なぜかマーカーを完全に振り切った上でクロスを上げようとする。そして、せっかくいい展開をしたにもかかわらず、クロスの時に相手DFにボールを当てている場面をよく目にする。これもまた相手DFを完全に抜き切ってからという指導を受けていることに関係するのではないだろうか。

目的はなにかを考えればいい。シュートであれ、クロスであれ。大切なのはネットを揺らすことであり、ゴール前にボールを届けることだ。そうすれば相手DFが近づいてくる前に、余裕を持ってクロスを上げることが選択肢になるだろう。中途半端に抜きにかかってDFにカット(というよりもぶつける)されるよりも、相手がタックルをすることを前提にDFの足元を通すクロスのチャレンジもあるだろう。このような場面は世界の舞台ではよく目にする。そしてDFが目の前に立ちはだかっても、涼しい顔でピンポイントのクロスを上げ続けていたのが、あの天才マラドーナだ。

これはあくまでもDFとの1対1の局面に限ったことなのだが、海外のサッカーからJリーグに目を移すと、あまりにも基本に忠実すぎて無駄だと思うプレーが多々ある。相手が近づいてくる前、もっとプレッシャーのかからないフリーの状態の時に技術を発揮すれば、簡単なこともあるはずだ。

第22節の鹿島対マリノスで生まれた大迫勇也の芸術的な右足のカーブをかけた決勝点。DFが飛び込めない間合いでボールを蹴ってしまえば、相手が百戦錬磨の中澤佑二でも無力にできる。

あんまり難しく考えない。そう言うと真面目な指導者の方々に怒られてしまうかもしれないが、相手の股の下にもスペースがある。そう思うだけで、プレーの選択肢はかなり広がるはずだ。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている