テニスの四大大会第3戦、ウィンブルドン選手権が7日、幕を閉じた。男女のシングルスで優勝候補が脱落する波乱が続き、最終日に男子シングルスでアンディ・マリー(英国)が77年ぶりの地元優勝を果たすなど、話題の尽きない大会だった。そんな芝の聖地で、元気な姿を見せたのが42歳のクルム伊達公子(エステティックTBC)だった。

女子シングルスでは、ことしの全豪オープンと並んで2008年の現役復帰後では最高の3回戦まで進出し、センターコートで世界ランキング1位のセリーナ・ウィリアムズ(米国)との対戦を実現した。女子ダブルス、混合ダブルスと3種目に出場し、計6試合を戦った。2週目の半ばまで相性のいい芝でのプレーを満喫し「十二分じゃないですか。ここは自分にとっても大切な場所だし、全豪以上と言ってもいい」と満足そうな笑みを見せた。

1989年にクルム伊達がウィンブルドンでデビューした当時、今大会の出場選手の約半数は生まれていなかった。親子ほども年齢が違う若手に交じって戦える要因として、独特のプレースタイルが挙げられる。球の跳ね際をたたく代名詞の「ライジングショット」で、速い展開のテニスを披露。芝は球足が速いうえにバウンドも低く、ベースラインでの打ち合いが主流のパワー全盛の時代では、戸惑いを見せる選手も多かった。1回戦で当たった18歳のカリナ・ビットヘフト(ドイツ)はまったくタイミングが合わず、ミスを量産。S・ウィリアムズとの対戦でも、ラリー戦に持ち込んだシーンでは相手を慌てさせた。

クルム伊達は「みんな私のボールは滑ってくると言う。ハードコートで高いボールを打ち慣れている選手が、膝下や腰より低い位置で打たされるのは、心地良くないみたい」と解説した。スライスなどを駆使して強打をいなし、機を見てネットに出るプレーなど、ベテランの引き出しの中身は豊富だ。「今の選手は来たボールを、バン、バン、バンって打つだけ。コート全体を使おうとしない」という言葉に実感がこもる。徹底した体調管理や昨夏からのトレーニング方法の見直しが奏功し、今季は大きなけがはない。全豪後に「体が動いてくれれば、自分のテニスができることが確認できた」と誇った技術の高さを、ウィンブルドンでも見せた。

いつまで現役を続けられるか問われた。「毎年そうだけど、それは夏が終わってから夫(ミヒャエル・クルム=レーサー)と話し合うことになると思う。体が二つあればプレーは続けると思うけど、プレーを止めたら子どもをつくろうと思っている。私は42歳で、そう時間は残っていない」と明かした。ベテランの雄姿が見られる時間は、そう長くはないかもしれない。

鉄谷美知(てつや・よしとも)1977年生まれ。仙台市出身。2002年に共同通信入社。福岡支社、大分支局を経て07年に大阪支社運動部。12年4月から運動部でサッカー、テニスをはじめ幅広く取材。