19分の12。なんの数字かと思われるだろうが、今回のコンフェデレーションズカップで決勝トーナメント進出を果たした4カ国のワールドカップ(W杯)を制した合計の回数だ。ブラジル5回、イタリア4回、ウルグアイ2回、スペイン1回。歴代のW杯優勝国が繰り広げた、今大会のノックアウト・ステージは、ある意味で緩さも垣間見られたグループリーグとは、まったく違う様相を呈した。

なにが違うのかと考えたとき、一番強く伝わってきたのは、「いかにして勝つか」を最大目的としていた点だ。そして世界のトップレベルは、その目的を達成するためには良い意味での割り切り方をする。結果的に4位に終わったが、ウルグアイはその典型ではなかったのかと思う。

来年のブラジルでの本大会出場を目指す南米予選では現在5位。開催国のブラジルを除く9チームの中で、思わぬ苦戦を見せる初代W杯王者だが、いざ世界タイトルを懸けた本大会に出場してくると、当然のようにしぶとさを見せる。そして、日本の“大和魂"にも似た“ガラ"と呼ばれる特別なスピリットが、約330万人しか人口のいない小国ながらも、コパ・アメリカではブラジルの8回、アルゼンチンの14回を抑える最多15回の優勝を成し遂げる原動力となっているのだろう。

終了間際のCKからパウリーニョに決勝点を許し1―2惜敗したブラジルとの準決勝。"セレステ・オリンピカ"の名で知られる空色のユニホームの戦いぶりは、日本にはないものだった。それは相手にいくらボールを持たれても、自分たちのスタイルで戦いを演じることができるということだ。

「内容では自分たちが上回っていた。前線からプレッシャーをかけ、ブラジルの攻撃陣にボールを簡単には渡さなかった」。ブラジルにボールを64%も支配されながらもスアレスが吐いた言葉は、ただの負け惜しみではなく、このような状況でもウルグアイは勝機を見つける術を持っているということだ。事実、前半のフォルランのPK失敗がなかったら、試合はどう転んでいたかはわからない。おそらく先制を許し攻めに出るブラジルに対し、90分間のほとんどをせめられ続けても精神的に破綻をきたすことのない屈強な8人の守備者たちがゴールを守り続ける。そして前線には独力でも相手ゴールを陥れる能力を持つフォルラン、スアレス、カバーニの超豪華なアタッカー陣が控える。彼らが鮮やかなカウンターを決めて、ブラジルから追加点を奪っていても、なんら不思議はなかった。

いわゆる強豪国というのは、試合内容はともかくとして「勝ち方」を知っている。またそれを知らなければ、強豪国と呼ばれるまでにならないのだろう。誰かは忘れたが、昔ある選手がこういうことを語っていた。「一度W杯を制してしまえば、優勝するためのノウハウが分かる。だからまた優勝できる。ただし、1回優勝するまでの道のりが大変なのだ」と。その言葉を聞けば、過去19回のW杯で優勝したのが8カ国しかないのもうなずける。そして3度の決勝戦を戦いながらも、いまだ優勝のないオランダは、まだノウハウを手に入れていないということなのだろう。

ウルグアイに限らず、今回のコンフェデ杯の4強に進んだ国々と日本を比べると、やはり日本のサッカーは幼いなと感じてしまう。その最大の差は、サッカーにおけるアイデンティティーが確立されている国と、模索している最中の国との違いだろう。そして、このギャップを埋めるのはそう簡単なことではないように思える。なぜならサッカー強国は、長い時間をかけて自分たちのスタイルを確立してきたわけで、世界を舞台にした日本の戦いが始まったのはまだ15年足らずだからだ。

そうはいっても、他の国と同じことをしているのでは、W杯本大会でのグループリーグ突破もおぼつかない。その意味で大言壮語に聞こえるが、選手たちが「優勝を狙う」と言い続けることは決して悪いことではないと思う。ただ、間違えないでほしいのは、試合は「勝つために」なにをやるのかであって、「良い内容」が1番ではないということだ。

「自分たちのサッカーをやる」。日本の選手たちの口からよく聞くフレーズだ。そして日本の自分たちのサッカーというのは、自チームでボールを保持していくサッカーだ。できるだろう。ただし、それはアジアを舞台にした場合。でもそれがW杯の舞台となると、相手は格上、よくても同等レベル。試合は50%にも満たないポゼッションになることは火を見るより明らかだ。それは裏を返せば半分以上は、自分たちのサッカーができないということを意味する。

ボールを持たないところでのサッカーの進め方。ザック・ジャパンは、あと1年でここを強化しなければ苦しいだろう。ウルグアイのように、相手にボールを支配し続けられてもなんとも思わないずぶといハートが、いまの日本にあるとは思えない。

そうなれば、自分たちのサッカーをやるための第1弾として、イタリア戦で岡崎慎司が見せたような相手のボールを奪い取る力を、香川真司、本田圭佑ら前線の選手が身につけなければならないだろう。さらにいうならばボランチは、ボール奪取が最低条件というのは、ブラジルのパウリーニョ、ルイスグスタボを見ていても分かったはずだ。

自分たちのやりたいサッカーがあるのなら、その前の一苦労に手を抜いてはならない。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている