シーズン半分まで来たF1では、現在、4年連続王者を目指すレッドブルのセバスチャン・フェテルが頭一つ抜け出し、フェラーリのフェルナンド・アロンソ、ロータスのキミ・ライコネン、さらにはメルセデスのルイス・ハミルトンが追う展開となっている。まだまだシーズンは折り返し地点、この先の展開を予想することは難しい。しかし、チャンピオンシップ争いが過熱していく中、もう一つの争いが既にスタートを切った。それが来季のシート争いだ。

口火を切ったのはレッドブルのマーク・ウェバー。彼は今季限りでのF1引退をイギリスGPで発表。突如、チャンピオンチームのシートが空席になった。下位チームの席が一つ空いた程度ならよくある話だが、チャンピオンチームのシートとなると話は違ってくる。まるでビリヤードのように、打ち方一つで、数々のチームへシート争いの影響が波及するからだ。

一般論で言えば、レッドブルにはトロロッソというジュニアチームがあり、王者フェテルもトロロッソからレッドブルへ昇格したことを考えると、現在トロロッソにいる2人のドライバーが第1候補となる。しかし、チャンピオンチームのドライバー候補となると、彼らでは物足りないと考える人も多い。そこで候補に挙がっているのが、ロータスのライコネンだ。彼は一度F1を引退してWRC(ワールド・ラリー・チャンピオンシップ)の世界へ行ったが、その時レッドブルがスポンサーとなった縁がある。フェテルとの仲も良く、2人の王者経験者が並ぶラインナップに死角は見当たらない。

ライコネンが移籍するとなれば、優勝を狙える力を持つロータスのシートが今度は空くことになる。ロータスとすれば、ライコネン級のドライバーを見つけることは難しく、ライコネンより格下のドライバーとなると、今度は有力なスポンサーを持つドライバーも候補に入ってくる。現在、中盤以下のチームで戦う資金的に恵まれたドライバーとすれば、勝てるシートを買うチャンスがあるならば、当然そこを目指して交渉に当たる。そうなると、今度は中盤チーム以下のシート争いも勃発、というわけだ。ドライバーの速さ、資金力、政治力、市場価値、あらゆる要素が入り混じったシート争いもまた、F1で注目すべき戦いのひとつかもしれない。(モータージャーナリスト・田口浩次)