8月25日、ボクシングファン待望の2試合が行われる。ロンドン五輪ミドル級金メダリストの村田諒太(三迫)がプロデビュー戦に臨めば、別会場で「怪物」と呼ばれるライトフライ級の井上尚弥(大橋)が最短タイとなる4試合目での日本王座獲得を狙う。ともに決して楽な相手ではない。敢えて強者を選んだ両者の勇気に拍手を送りたい。

村田のデビュー戦(有明コロシアム)には驚いた。プロの雰囲気に慣れるためにも初戦は組みしやすい相手を選ぶケースが圧倒的に多い。しかし「本物と闘わないと意味がない」という村田は、言葉通りに相当な実力者とグローブを交える。東洋太平洋ミドル級と日本スーパーウエルター級の両タイトルを持つ柴田明雄(ワタナベ)がその人。柴田はオーソドックスな右のボクサーファイターで、5月に東洋王座を獲得したばかり。左右ともKOの威力を秘めており、油断は大敵だろう。

村田は6月10日、世界最強プロモーターのボブ・アラム氏が率いるトップランク社と契約を結び、既に世界へのレールが敷かれている。果たしてそのエリートコースを村田がどう進むのか。五輪金メダリストという商品価値は高く、周囲の期待感は大きい。そのプレッシャーを楽しむかのように村田は「日本で一番強い選手と闘えることに感謝している。全力を尽くして頑張る」と笑みさえ浮かべた。頼もしい限りである。

同日、井上は神奈川県座間市民体育館で日本王者・田口良一(ワタナベ)に挑む。勝てば1990年、バンタム級の辰吉丈一郎(大阪帝拳)に並ぶ最短日本王者となる。井上はプロ3戦を通じ、才能は証明済み。スピード、テクニック、パワーとも抜きん出ており、大橋秀行会長は「具志堅用高と比べても遜色ない実力」と将来性に太鼓判を押す。確かに井上はあらゆる面で魅力にあふれている。「稀な逸材」といえるだろう。既にリングサイドの前売り券も予約で完売だという。

一方の田口は4月、新王座に就いたばかり。こちらもスピードが持ち味で、得意のワンツーは速くて鋭い。「勝てば人生が変わるかもしれない。僕にとってはビッグチャンス。だから絶対に勝ちます」と気合満点だ。試合は初回のゴングから若者同士らしいキビキビとした打ち合いは必至。その中、井上がどうペースをつかみ、主導権を握るのか。田口にも先輩プロとしての意地がある。こちらも必見だ。(津江章二)