今年のプロ野球オールスター戦は7月19日から札幌、神宮、福島・いわきで行われる。ファン投票の結果も発表され、日本ハム・大谷翔平選手が外野手の3人目に滑り込み、高校出ルーキーとしては楽天・田中将大投手以来のファン投票選出となった。投手としての登板も予想され、また二刀流をめぐって賛否両論が沸き起るだろう。

ただ、「夢の球宴」と呼ばなくなって久しい。1971年のオールスター戦での阪神・江夏豊投手の9連続三振。その夢の記録に並ぶかと思われた84年の巨人・江川卓投手が9人目の近鉄・大石大二郎選手に二ゴロを打たれたシーンが懐かしく思い出される。ファンをわくわくさせたオールスター戦だった。近ごろの球界を見ていると、オールスター戦をはじめとしてプロ野球の価値をアップさせる努力をしていないように映る。果たして長期低落傾向にあるプロ野球人気の回復戦略を持てているのだろうか。

▽交流戦で価値下る

昔の球宴はセ、パ両リーグのスター選手が一つの球場に勢ぞろいする数少ない機会だから、普段より高い入場料にもファンは駆けつけたものだ。しかし、最近はテレビなどで頻繁にスター選手のプレーを見られる上に、2005年から始まったセ・パ交流戦もありオールスター戦の価値は下がった。お手本とした大リーグの球宴は昔から1試合(50年ほど前に数年2試合開催)で、30球団ある現在では30年に一度回ってくる「お祭り」で、迎える地元は盛り上がる。日本でも球場使用料やテレビ放映権料の一部などで各球団本拠地球場の台所を潤している面はあるが、旧態然とした取り組みにしか見えない。

▽NPBの数少ない財源

これまでにも7月の稼ぎ時に約1週間の球宴休みがあるのは営業上もったいない、3試合開催は選手の負担になる、試合数を1試合にして球宴の価値を上げるべき時代だ―といった意見も再三聞かれたが、今日まで2試合以上の開催を堅持しているのは二つの理由からだと思う。一つは高い入場料にもかかわらず1試合2~3万人の観客動員があること。そして二つ目は球宴が主催者である日本野球機構(NPB)の日本シリーズと並ぶ数少ない収入源であるからだ。しかし、普段より高く設定された最高1万円から3千円ほどの入場料をどれだけのファンが払い続けてくれるのか。また、NPBは球団からの分担金(1球団約7千万円)のほかにオールスター戦と日本シリーズ第4戦以降の収入で運営されているが、一昨年まで4期連続赤字を計上するなど、その弱い財政基盤が指摘されてきた。その対策の決め手はプロ野球の価値を上げ、球界全体の収益増を図ることだが、球界幹部にそんな認識が強くあるようには思えない。

▽セ、パで違うスタンス

誰も改革に着手しようとしない。早い話、仮にある球団が経営破綻した場合、野球協約ではNPBは一定期間、選手や球団職員の給料を払う義務を負っているが、そんな財源はないだろう。各球団に頭を下げて分担金をお願いするしかない。これでは球界全体の利益を大所高所から見る姿勢は持てない。ただ、NPBが力を付けようにもできない仕組みになっているのが現状だ。経営は各球団に任されるべきで、大リーグのようにNPBに財力を持たれ権力を集中されては困ると思う球団があるからだ。根来泰周前コミッショナーが「金も権限も与えられないから何もできない」との捨てぜりふを残して去ったのは記憶に新しい。

例えば、オールスター戦を1試合にすることでアップするテレビ放映権料をNPBに握られては困る、もっと言えば収益構造を変えることが各球団の経営にまで波及するのは絶対に避けたい。6球団が運命共同体だとしていろいろな取り組みをするパと、巨人、阪神を中心として球団独自色を譲れないセでは考え方、取り組みに大きな差がある。その行司役たるコミッショナーが役割を果たしていない、という不満が球界にうずまく。

▽選手会が突き付けた「ノー」

昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でプロ野球選手会が不参加表明した原因はその収益がNPBに入らない仕組みを問題視したからだった。NPBが中心となって代表チーム「侍ジャパン」を常設して事業展開し、その収益で野球底辺の拡大ひいては野球人気回復を図ることなどで合意した。しかし、具体策が見えて来ない。今回の「統一球問題」に端を発し、選手会がNPBの加藤良三コミッショナーを「プロ野球の将来に消極的で責任回避的な人物」として、事実上の交代を求めているのも、そうした能力、やる気に疑問符を付けているからではないだろうか。昨年の加藤コミッショナーの3期目就任がスムーズに進まなかったのは、パの一部球団オーナーが難色を示したからだと言われている。

7月10日のオーナー会議で加藤コミッショナーの進退問題にまで発展するかどうかは分からない。ただ、04年の球界再編問題、選手会ストライキによる初の試合中止を機に、良くも悪くも巨人を中心に回ってきたプロ野球が大きな曲がり角に差しかかっているように思う。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆