「もうはまだなり、まだはもうなり」というのはたしか、株式など相場の格言だったはずだが、2日まで行われた男子ゴルフのダイヤモンド・カップを見ていて、この言葉が頭を離れなかった。

トップに並んで最終日を迎えたのは、4月にプロ転向してから破竹の勢いが続く松山英樹と、大ベテランの中嶋常幸だった。58歳と21歳、年齢差は実に37年で松山の父、幹男さんがちょうど中嶋と同じ年の生まれである。親子ほど年が離れた2人が、プロの第一線、同じ土俵で勝負した。実力者、谷口徹の表現を借りれば「(年齢が)二回り? いや、三回り違うんだろ。すごいスポーツだね、ゴルフって」。なかなか他の競技では見られない組み合わせとなった。

大変失礼な話、始まる前は最終ラウンドの盛り上がりをあまり期待していなかった。“的当て"の要素が強いゴルフを「スポーツじゃない」なんて冷やかす人がいるが、これは週に1、2度、18ホールしか回ったことのない人がいう言葉。1ラウンド集中力を保って10キロ近く歩き、4日間続きで72ホールを戦えば、やはり体力がものを言う。シニアの域に達している中嶋が優勝できるとは思えなかった。

その予想は「本当に」失礼でした。象徴的だったのは、348ヤードと距離の短い6番のパー4。途中にこぶやらラフやら難所が配置されたホールで、松山はドライバーをぶん回し、それらをすっ飛ばしてグリーン手前のバンカーに放り込んだ。ピンが手前寄りで、ここからは寄せやすい。一方の中嶋はラフ、しかも最も打ちにくいとされる、つま先下がりの斜面に中途半端に止まった。若さとパワー、そして勢いで、大先輩に引導を渡す。原稿に書くハイライトはこのホールかな、などとよこしまな考えで見ていた。

ところが、先に打った中嶋は、熟練の巧みな技でボールをふわりと浮かせ、見事に1・5メートルにつけた。松山は3メートルほど。2人ともこれを沈めてバーディーと、一歩も譲らなかった。最終結果はご存じの通り。松山が制し、終盤中嶋は崩れたのだが、それは無味乾燥な「成績」の一部でしかない。2人はともにライバルとして意識し、迫力ある競り合いを演じた。

「まだ」プロ転向5戦目の松山は、すでに2勝を挙げて世界に通じる力を身につけた。経験不足を指摘する声は多いが、19日に開幕する全米オープン選手権を含め「もう」メジャーの舞台で優勝争いを演じても不思議はない。

「もう」50歳以上に限定されたシニアツアーに出場している中嶋は「おれはレギュラーツアーの選手だとはっきり分かった。まだまだやるよ」と史上最年長でのツアー勝利(通算49勝目)を目指し燃えている。「まだ? もう?」。2人の限界と常識を打ち破る活躍が楽しみだ。

木村 壮太(きむら・そうた)1973年生まれ。横浜市出身。97年共同通信に入社後、相撲、プロ野球(オリックス、阪神、横浜)、モータースポーツなどを取材。2007年からボストン支局でレッドソックスを中心に大リーグを担当。12年1月に帰国し、ゴルフ担当に。