5月26日に甲子園球場で行われた阪神―日本ハムで、注目のドラフト1位ルーキーのプロ初対決が実現した。マウンドに立ったのは、大阪桐蔭高のエースとして昨年の甲子園大会を春夏連覇した藤浪晋太郎。打席で、投手と野手の「二刀流」挑戦で話題を呼ぶ大谷翔平が迎え撃った。

この日の対戦は3打席。結果は「5番・右翼」の大谷が2本の二塁打を放って「勝負」では軍配が上がった。試合は阪神が7―1と快勝し、藤浪が早くも4勝目を手にした。新しい時代の名勝負になるかもしれないライバル対決の“第1話"を目撃できたことを幸運に感じると同時に、高校時代に2人が紡いだもう一つの試合を思い出した。

2012年3月21日。第84回選抜高校野球大会1回戦で、藤浪がエースだった大阪桐蔭と、大谷を擁する岩手・花巻東がぶつかった。この時も大谷は藤浪から本塁打を放って「勝負」には勝ったが、プロ初対決と同様に試合は完敗だった。当時高校野球担当だった筆者の記憶には右翼席に伸びていった本塁打が鮮烈に刻まれている。まさかこんなに早く甲子園で2人の対決を再見することになるとは思ってもみなかったが。

1年あまりの時を経て、日本球界の将来を担うとも言われる2人は現在、一挙手一投足を追われる。特に大谷は投打両面とも同時進行で大成する道に挑戦しており、結果は注目の的になっている。「投手に専念させるべきだ」「やっぱり打者で育てた方がいい」。ファンから評論家まで様々なレベルで多くの意見が交わされる。投げても打っても、どちらの才能も高く評価されることの裏返しであり、そんな議論を巻き起こす楽しみな選手が現れたことは球界にとっても見る側にとっても歓迎すべきことだろう。

だからこそ、ふと思うことがある。それほどの素質豊かな選手を、これまでの常識や枠に当てはめて考えていいのだろうか、と。過去からは学ばなければならないが、固執しすぎれば未来を狭めることにもなりかねない。スポーツに限らず、時に私たちの社会は結論や結果を急ぎすぎるきらいがある。

米国では契約してすぐにマイナーを飛ばして大リーグでプレーする選手の例は極めてまれだ。また、学生時代まではシーズンに応じてフットボールやバスケットボールと野球といった具合に複数の競技に取り組む選手も多く、NFL(米プロフットボール)とMLB(米大リーグ野球)両方のオールスター戦に出場した経歴の持ち主さえいる。今後、もっと驚くようなアスリートが出てくる可能性だってある。

思ったような結果を残せないかもしれない。現時点で何が正解かを語るのは非常に難しいが、新たな道に挑んだ事実は確実に歴史に刻まれる。未知の領域に挑む姿を見守るのも一つの楽しみ方。途中でつまずいても、方向修正する時間はまだまだある。

前途有望な2人を焦りすぎず、長い目で見ていきたいと思う。なぜなら、彼らはまだ可能性にあふれる10代なのだから。

益吉数正(ますよし・かずまさ)1981年生まれ。宮崎県出身。2005年共同通信入社。千葉、甲府、福岡の支社局で警察などを担当後、11年から大阪運動部で高校野球を中心に取材。13年2月から本社運動部でプロ野球の遊軍担当。